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キツネとタヌキの化け比べ
京都府の民話 → 京都府情報
むかしむかし、ある村のお宮さんに、化けるのが上手なキツネが住んでいました。
それからこの村のお寺にも、化けるのが上手なタヌキが住んでいました。
ある日の事、キツネとタヌキがバッタリと顔を合わせました。
「これはキツネどん。お前さんは化けるのが、とてもうまいそうじゃないか」
「いやいや、タヌキどん。お前さんこそ、うまく化けるそうじゃないか」
「いや、キツネどんの方が上手ですよ」
「そんな事はありません。タヌキどんの方が上手ですよ」
二匹はお互いをほめ合っていましたが、でもそのうちに話しが変わってきて、
「おらの方が、化けるのが上手じゃ!」
「いいや、わしの方が上手じゃ!」
と、けんかをはじめたのです。
「よし、それならどっちの化け方がうまいか、化け比べをしようじゃないか!」
「のぞむところだ! では明日の朝、お宮さんに来てくれ」
「いいとも。もしキツネどんが勝てば、おらは村を出て行こう。その代わりおらが勝ったら、キツネどんが村を出て行くんだ。いいな!」
「よし、わかった」
さて次の日の朝、タヌキがお宮さんへ行ってみると、キツネの姿がありません。
(おかしいな。まさか、逃げたんじゃあるまいな)
まわりをキョロキョロ見回すと、社(やしろ)の前にタヌキの大好きなあずきご飯がそなえてありました。
(しめしめ、キツネが現れる前に腹ごしらえだ)
タヌキはあずきご飯に、手をのばしました。
そのとたん、あずきご飯がパッとキツネに変わったのです。
「わあっ! びっくりした! なんだ、キツネどんか」
するとキツネが、いばって言いました。
「どんなもんだい。今日の勝負は、わしの勝ちだな」
「しかたがない。今日の勝負は、おらの負けだ。そのかわり明日の朝は、お寺へ来てくれ」
次の朝、キツネはお寺へ出かけて行きました。
でも、タヌキの姿がありません。
(もしかして、わしに勝てないと思って逃げたかな?)
まわりをキョロキョロ見回すと、お堂の前にキツネが大好きなあぶらあげがそなえてありました。
(なんて、うまそうなあぶらあげだ。タヌキが出てくる前に、腹ごしらえだ)
キツネがあぶらあげに手をのばすと、あぶらあげがパッと消えてタヌキに変わりました。
「あはははは。キツネどん、まんまとだまされたな」
今度は、タヌキがいばって言いました。
「うーん、くやしいが、今度はわしの負けだ」
これで勝負は、一対一の引き分けです。
それからも二匹はこの村で化け方のうでをみがき、どちらも村人たちから化け名人と言われたそうです。
おしまい
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