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9月22日のイソップ童話
  
  
  
  乳しぼりの女
   ある農家の娘が、楽しいことを空想しながら、牛からしぼったばかりのミルクの入った桶(おけ)を、頭に乗せて運んでいました。
  「このミルクを売ったお金で、少なくとも300個の卵が買えるわ。
  そして、どんなに悪くても、卵からは200羽のヒナが生まれるわ。
  そして、そのうちの50羽は、親鳥に成長するわ。
  そう、ちょうどその頃はクリスマス前で、トリ肉が一番高く売れる時期だわ。
  高く売れると、そのお金で新しいドレスが買えるわね。
  真っ赤なドレス、とってもすてきな真っ赤なドレスよ。
  当然、クツもおそろいでね。
  そしてそのドレスを着て、クリスマスパーティーに出かけるのよ。
  すてきなドレスを着た美人のあたしが登場すれば、若い殿方はみんな、あたしにプロポーズしてくるわ。
  でも、すぐに受けてはダメ。
  こういうのは、じらすのがコツよ。
  
  あたしは、つれなく頭をツンともたげて、ていねいに、みんなの申し出を断るのよ。
  でも、みんなはあきらめず、あたしのまわりからはなれない。
  そこであたしは、・・・あっ!」
 娘が夢中になって頭をゆらしたとたん、ミルクの入った桶は地面に落ちてしまいました。
 そして、彼女のそうだいな計画は、終わってしまいました。
 これを日本語で、「捕らぬ狸の皮算用」と、いいます。
  
※「取らぬ狸の皮算用」
   → (まだ捕えないうちから、狸の皮の売買を考えることから) 不確実な事柄に期待をかけて、それをもとにした計画をあれこれ考えること。
  
  
  広辞苑 第五版より
おしまい