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7月26日の世界の昔話
ウサギのお嫁さん
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むかしむかし、あるところに、ウサギがピョンピョンピョンと、はねながらやってきました。
畑のキャベツを、食べに来たのです。
「しっ、しっ。毎日食べに来てはだめよ」
女の子が、手をふりました。
ウサギは赤い目をクリッとこちらへむけると、みじかいしっぽをふっていいました。
「おいで、かわいい女の子。わたしのしっぽへのっかって、わたしのおうちへいらっしゃい」
女の子は、みじかいしっぽへのりたくなり、はしっていってのりました。
「背中へ、しっかりつかまりなよ」
ウサギはこういって、とびだしました。
ピョンピョンピョン。
畑をよこぎって、ウサギの家につきました。
そして女の子を、台所へいれました。
「かわいいわたしのお嫁さん。キャベツで、お料理をつくっておくれ。わたしは、友だちよんでくるよ」
ウサギはうれしそうに、ながい耳をふりながら、でていきました。
まもなく、おおぜいのウサギをつれてきました。
カラスの牧師(ぼくし)さんも、黒い服をきてきました。
ウサギが、女の子をよびました。
「かわいいわたしのお嫁さん。お客さまがおそろいだよ。でておいで」
女の子は、シクシクと泣き出しました。
ウサギのお嫁さんになるのはいやだからです。
ウサギが、またよびました。
「お嫁さん、お嫁さん。お客さまがまっているよ。はやくでておいで」
女の子は小さなイスに、自分のボウシをかぶせました。
自分の服もきせました。
自分のクツしたもはかせました。
自分の身代わりをつくろうというのです。
そして女の子は、うらぐちからコッソリとにげだしました。
ウサギが、またよびました。
「お嫁さん、お嫁さん。あんまりおそいと、お客さまはおかえりだよ」
「・・・」
へんじがありません。
ウサギは、台所へきました。
「はやくしなよ。はやくしないとだめだよ」
ウサギは、トントントンと、お嫁さんのボウシをたたきました。
すると、ポトンとボウシがおちました。
スルリと、服もぬげました。
そこにあったのは、女の子のクツしたをはいたイスだけです。
「ややっ。お嫁さんに、にげられてしまったよ」
ウサギは、結婚式に来ていたみんなに笑われてしまいました。
おしまい