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10月18日の世界の昔話

金になったお姫さま

金になったお姫さま
ギリシアの昔話 → ギリシアの国情報

 むかしむかし、たいへん金の好きな王さまがいました。
「金はいい。ピカピカと光ってうつくしいし、なにしろねだんがとても高い。・・・どれ、宝の蔵(くら)へ行って金をながめてこよう」
 王さまは金のかんむりをかぶりなおして、金のいすから立ちあがりました。
 階段(かいだん)をのぼって、二階にある王さまじまんの宝の蔵へ入りました。
 宝の蔵は、かべも柱もてんじょうも、全て金でできていました。
 金のテーブルが並んでいて、その上に金のよろいや剣や花びんやおさらが、キラキラピカピカとかざられています。
 王さまはへやの中を見まわして、楽しそうにいいました。
「世界じゅうに、これほどたくさん金の宝を持っているものはいないだろう。だが、もっとたくさん金の宝がほしいものだ。もしも、わたしの手でさわったものがみんな金になったら、どんなによいだろう」
 王さまがそうつぶやいたとき、うしろからやさしい声がかかりました。
「王さま。それほど金が好きなのなら、そののぞみをかなえてあげましょう」
 その声に王さまがふりむくと、美しい女神(めがみ)が立っています。
「ほっ、本当ですか?」
「はい、あなたの手でさわったものは、すべて金にかわります。どんなものでも」
 女神はそう言うと、フッと、消えてしまいました。
「わたしの手でさわったものが、金になるとはすばらしい! では、さっそくためしてみよう」
 王さまはまどへ走ると、風でユラユラゆれる絹(きぬ)のカーテンをさすりました。
 するとどうでしょう。
 絹のカーテンは、お日さまのように明るくかがやいて、ドッシリと重い金のカーテンに変わってしまったのです。
「これはすごい! 本当に金になった」
 王さまは大喜びです。
 王さまは階段をかけおりて、庭の花園(はなぞの)に出ました。
 花園には美しい羽のクジャクが歩いていて、まわりはケシの花でいっぱいです。
 王さまは、クジャクの頭をなでました。
 すると見るまに、クジャクはとてもまぶしい金のクジャクに変わりました。
 つづいて、ケシの花にさわりました。
 ケシの花も、見るまに金の花に変わりました。
「なんと、動物や植物まで金に変わってしまった。・・・女神さま、ありがとうございます」
 王さまが大喜びしていると、その声を聞いたお姫さまが、花園にやってきました。
「まあ、おとうさま。何を喜んでいらっしゃるの?」
「おお、姫か。見ておいで。わたしが手でさわると、なんでも金になってしまうのだよ。さあ、こっちへ来てごらん」
 王さまは、かわいいお姫さまの頭をなでました。
 するととたんに、お姫さまは、あっと声をだして、顔もからだも金になってしまったのです。
 王さまは、お姫さまをゆすぶって泣きました。
「姫、姫。どうか目を開けておくれ! どうか返事をしておくれ!」
 けれども、金になったお姫さまは目を開けませんし、返事もしてくれません。
 王さまは、天に向かって手を合わせてたのみました。
「女神さま。わたしが間違っていました。どうか魔法をといてください。だいじな姫をどうぞ、もとのかわいい姫にしてください」
 すると、どこかで女神さまの声がしました。
「それでは、うらの川でよく手を洗いなさい。そして、その川の水を金になったものにかければ、もとの姿に変わりますよ」
 王さまは、さっそく川へかけだすと、ゴシゴシと手を洗って、その水を金のお姫さまの頭にかけました。
 すると、お姫さまはニッコリ笑って、もとの美しい姿になりました。
 王さまは、クジャクにもケシの花にも絹のカーテンにも水をかけました。
 そして、お姫さまをしっかりとかかえて、うれしそうに帰って行きました。

おしまい

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