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2016年 4月11日の新作昔話
大力自慢のシイの失敗
福井県の民話 → 福井県情報
むかしむかし、若狭(わかさ)と丹後(たんご)の国境いにある染ヶ谷(しみがたん)という小さな部落に、シイという名の、少し頭の弱い力自慢がいました。
ある時、十八里も離れた京都にいこうと思ったシイは、さっそく血坂道(ちさかみち)といわれる急な坂道を、苦もなくのぼりはじめたのです。
やがて峠につくと、そこに名高い石のお地蔵さんがありました。
「地蔵さんか」
シイは、このお地蔵さんをかついで京都に行って、みんなをおどろかせようと思いました。
そして上機嫌で大きな石のお地蔵さんを軽々とかつぎあげると、急な坂道を下っていきました。
しばらくして矢原(やはら)という村についたシイは、はじめに出会った村人に、若狭から京都までの道のりをたずねました。
すると村人は、
「若狭から京都までは、十八里はあるよ」
と、答えたので、シイは、
「なんだ、まだ十八里もあるのか」
と、重いお地蔵さんをかつぎなおして歩いていきました。
次の宿場でも道行く人にも、若狭から京都までの道のりを聞くと、さっきと同じように、
「若狭から京都までは、十八里はあるぞ」
と、答えます。
それからも何度か、通りすがりの人に若狭から京都までの道のりを聞いたのですが、やはりみんな口をそろえたように、
「若狭から京都までは、十八里はある」
と、言うばかりです。
「何だ何だ、ずっと歩いてきたのに、なんでまだ十八里もあるのだ!」
さすがのシイも、腹が立ってきました。
本当なら、『京都までは、あと何里あるのか?』と、尋ねなければならないのですが、少しばかり頭の足りないシイには、自分の尋ね方が間違っている事など、わかるはずもありません。
だからいつまで歩いても同じ里数を歩かされるのは、この石のお地蔵さんのせいだと思い込んで、
「ええい、もう京都に行くのはやめた!」
と、もときた道を染ヶ谷へと戻っていきました。
おしまい
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