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      2020年11月16日の新作昔話 
          
          
         
ピーター・パン 
バリの童話 
      
        
          | ♪音声配信(html5) | 
         
        
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          | 音声 得本綾(コトリボイス) ラジオHP | 
         
       
       
      
      
       ある日の夜、とつぜんウェンディーの部屋のまどから、男の子が飛び込んできました。 
「あなたは、だあれ?」 
「ぼくはピーター・パン。夢の国ネバーランドから迎えに来たんだ。さあ、一緒に冒険に出かけよう」 
 一緒にいた弟のジョンとマイケルも、冒険と聞いて大喜びです。 
「ネバーランドって、どうやって行くの?」 
「飛んで行くんだ。妖精(ようせい)のティン力ー・ベルの羽の粉をつけると、空を飛ベるんだよ」 
        
       「わあ、本当だ。すごーい!」 
「ネバーランドは、二つ目の角を曲がって、あとは、どこまでもまっすぐのところさ」 
 空高く飛んで行くみんなの目には、家がおもちゃの様に小さく見えます。 
 いくつもの夜が過ぎ、いくつもの朝が来ました。 
 とつぜん、ピーターがさけびました。 
「見てごらん、あれがネバーランドだ。 
 あの黒い船は、海賊船だよ。 
 そしてあそこにいるのが、恐ろしいフック船長。 
 むかしフックは、腕と時計をワニに飲み込まれたんだ。 
 だからチクタク音を立ててワニが出て来ると、まっさおになって逃げ出すよ。アハハ」 
 島では、子どもたちが待っていました。 
「ピーター、お帰りなさい。・・・あれ、この人は、だあれ?」 
 子どもたちがかけ寄ると、ピーターは言いました。 
「ウェンディーだよ。ぼくたちのお母さんになってくれるんだ」 
 ピーターの家は、地面の下にあります。 
 せまいけれど、あたたかくてすてきなところです。 
 たっぷり遊んで疲れると、ウェンディーお母さんがおやすみ前のお話しをしてくれます。 
 昼間は、湖や森の探検です。 
 でも海賊船が、いつも遠くからながめています。 
 それはフック船長が、子どもたちをねらっているからです。 
 
 ある日、ウェンディーが言いました。 
「パパとママに会いたいな。お家に帰りたい」 
「フン! 帰りたいなら、勝手にすればいい!」 
 ピーターはすねて、どこかへ飛んで行ってしまいました。 
「ウェンディー、行っちゃ、いやだ!」 
 子どもたちが、泣き出しました。 
 その時、突然フック船長が現れたのです。 
「フフフフフフッ。ピーターはおらんな。よし、野郎ども、子どもたちをつかまえろ!」 
 子どもたちは、次々に捕まってしまいました。 
「大変よ、ピーター。みんなが捕まったわ」 
 ティンカー・ベルが、大あわてで知らせました。 
「よし。ワニになって、フックをおどかしてやる」 
 ♪チクタク、チクタク。 
 ピーターは時計の音を立てながら海に飛び込み、泳ぎ出しました。 
「フフフフフフッ。もうすぐ、お前たちは海の底だ」 
 後ろ手にしばられた子どもたちを見て、フック船長はごきげんです。 
と、そこにふしぎな音が。 
 チクタク、チクタク・・・・・・。 
「ワ、ワッ、・・・ワニだあー!」 
 フック船長は、あわてて隠れました。 
 子どもたちが、こわごわ海をのぞいてみると。 
「あっ!」 
 船にあがってきたのは、ワニではなくてピーターでした。 
 ピーターは、子どもたちを次々に助け出しました。 
 もちろん、大切なウェンディーも。 
「うぬぬ、ワニかと思えば、お前だったか」 
 怒ったフック船長がピーターに飛びかかり、船の上ですさまじいたたかいが始まりました。 
 身の軽いピ一ターが、短剣をビュン! 
 それをよけたフック船長が、バランスをくずして。 
「うわああー!」 
 フック船長は海で大口を開けていたワニに、パクリと食べられてしまいました。 
 これで海賊船は、ピーターのものです。 
 ティンカー・ベルが妖精の粉をかけると、海賊船はフワリと空に浮かびました。 
 いくつもの夜が過ぎ、いくつもの朝をむかえ、船はウェンディーたちの家へと進みました。 
 そしてようやく家へ着くと、ウェンディーたちはまどから子ども部屋に飛び込んで、待っていたお母さんに飛びつきました。 
「だまって出て行って、ごめんなさい。あたしね、ピーターと冒険に出ていたの」 
 後ろをふりかえると、ピーターと海賊船は元来た道を帰るところでした。 
 飛んでいくピーターを見送りながら、ウェンディーたちは少し悲しくなりました。 
        
        そんなウェンディーたちに、ピーターは明るく手をふると、 
「冒険をしたいときは、いつでも呼んで。すぐに迎えに行くから。では、また会おう」 
 ピーター・パンは、今もネバーランドに住んでいます。 
 いつの日か、あなたの部屋にも飛んで来るかもしれませんよ。 
      おしまい 
         
           
          
        
       
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