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うば捨て山

ささずんと昔話講座 第15話【姥捨て山】

読者の「NS.MOOOON」さんの投稿作品。

知っているようで知らない日本昔話を、ゆっくりの解説でずんちゃんとささらちゃんが学んでいく動画です。

♪音声配信(html5)
音声 雪 仁菜子

にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文

 むかしむかし、六十才をこえたお年寄りを、『うば捨て山』という山に捨てる国がありました。
 はじめは食べ物がなくなったために仕方なくお年寄りを捨てていたのですが、食べ物がある今でも、この国では六十才をこえたお年寄りを山に捨てるのです。
 そうしないと、殿さまからひどい目にあわされるからです。

 ある年の事、ちょうど六十才になったおじいさんがいました。
 息子や孫たちはおじいさんをかごに入れると、仕方なくうば捨て山へ出かけて行きました。
 うば捨て山は昼でも暗い森の奥なので、ちゃんと目印をつけていないと、ふもとには帰れません。
 かごの中のおじいさんは時々かごから手を出して、道の木の小枝をポキポキと折りました。
「おじいさん、こっそり村へ帰るつもりかな?」
 孫の言葉に、息子が心配顔で尋ねました。
「おじいさん、ポキポキ折った小枝をたよりに、また帰るつもりか?」
 もしそうだとすると、殿さまにひどい目にあわされます。
 おじいさんは、静かに首を振りました。
「いいや、そうじゃない。
 わしは、死ぬ覚悟は出来ておる。
 この枝は、お前たちが村へ帰るための目印だ。
 道に迷わぬようにな」
 それを聞いた息子や孫たちの目から、涙がこぼれました。
「おじいさん、ごめんなさい!」
「おじいさん、かんべんな!」
「あははは。泣くな、泣くな。それよりも日がくれる前に、早くうば捨て山に行こうじゃないか」
 おじいさんは孫の頭をなでながら言うと、息子がきっぱりと言いました。
「いいえ、だめです! 殿さまから、どんなひどい事をされても構わない! おじいさんも一緒に、村へ戻るんです!」
 こうして息子たちはおじいさんを連れ戻すと、こっそりと家の奥に隠しておきました。

 それから数年後、このお年寄りを大事にしない国に隣の国から使いが来て、こんななぞかけをしました。
 どこから見ても色も形もそっくり同じ二匹のヘビを持って来て、
「どちらがオスで、どちらがメスかを当ててみろ」
と、言うのです。
 殿さまも家来たちも、どちらがオスでどちらがメスかなんて分かりません。
 そこで役人たちは、国中の村々を回って尋ねました。
「だれか、このなぞかけがわかる者はいないか? わかった者には、殿さまからほうびがもらえるそうだ」
 しかし殿さまや家来たちにもわからないことが、村人にわかるはずがありません。
「うむ。誰もわからぬか」
 役人たちがあきらめて帰ろうとすると、あのおじいさんの孫が前に出て言いました。
「そんなの簡単さ。
 家の座敷にワタをしいて、ヘビをはわせてみればいい。
 一匹はジッとしているし、もう一匹はノロノロはい出すさ。
 はい出す方がオスで、おとなしくしているのがメスだ」
「それは本当か?」
「ああ、うちのおじいさんに聞いたから間違いないさ」
「なに? 確かお前のところのじいさまは、とうのむかしにうば捨て山に捨てたはずでは」
「あっ、いや、その、聞いたのはむかしだ。ずーっとむかしに聞いたんだ」
「・・・ふむ。とにかく今は、なぞかけの答えを殿さまに知らせねば」
 役人たちはそう言うと、お城へと帰っていきました。

 孫が答えたなぞかけの答えは見事に正解で、それを聞いた隣の国の使いは感心しながら帰って行きました。
 実はこのなぞかけ、この国の人間がおろか者ばかりの国なら攻め込んでやろうと、隣の国の殿さまが考えたものでした。
 それが見事に正解したので、隣の国の殿さまは、
「あの国には、知恵者がおる。下手に攻め込んでは、負けるかもしれん」
と、この国に攻め込むのをあきらめたのです。

 さて、孫のおかげで助かった殿さまは、城に孫を呼び寄せると言いました。
「そなたのおかげで、この国は救われた。約束通りほうびをやるから、何でも望むがよいぞ」
「あの、何でもでございますか?」
「そうだ。何でもよいぞ」
 そこで孫は、殿さまにおそるおそる言いました。
「ほうびの代わりに、その、うば捨て山に年寄りを捨てるのを、やめるわけには・・・」
「ほう。なぜじゃ?」
「実は、あの答えは、おじいさんに聞いたのです」
「うむ。むかし、じいさまに聞いたそうだな」
「それが、むかしではなく・・・」
 孫から全ての事を聞いた殿さまは、にっこり笑って言いました。
「よしわかった。そなたの望みを、かなえてやろう。これからは、年寄りを大切にすることを約束しよう」

 こうしてこの国は、お年寄りを大切にする国になったと言うことです。

おしまい

うば捨て山

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