| 福娘童話集 > きょうの新作昔話 >いうにいわれず 2023年11月20日の新作昔話
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
  イラスト  朗読パーク NPO声物園チャンネル
 いうにいわれず
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 語り 「成瀬安澄」  朗読パーク NPO声物園チャンネル
 
  むかしむかし、ある山里(やまざと)に、亭主(ていしょ)と女房と娘の三人が仲良く暮らしていました。 
   ある晩の事。 
   近所から重箱(じゅうばこ→食物を盛る箱形の容器で、2重・3重・5重に積み重ねられるようにしたもの)いっぱいのぼたもちをもらいました。 
   三人は同じ数だけ食ベましたが、困った事に一つだけが残ってしまいました。 
   女房が、二人に言いました。「一つだけ残りましたが、どのように分けましょうか?」
 すると娘が、
 「それなら三人で歌をよんで、一番上手によんだ者が食ベることにしましょう」
 
  と、言い、亭主も、「それは、よい思いつきじゃ。では、わしが、
 ♪おもうようには、いうにいわれず。
 と、下の句を出すから、これに上の句をつけよう」
 と、言いました。
 そこでさっそく、三人は上の句を考えました。
 一番先に、娘が言いました。
 「できました。
 
  ♪朝おきて、まくらにまとう、みだれ髪♪おもうようには、結うに結われず」
 娘のうたに、亭主は感心すると、
 「なるほど、うまいことよんだものだ。
 それでは、次にわしがいくぞ。
 
  ♪行きちがう、舟に故郷(こきょう)のこと問えば♪おもうようには、いうにいわれず」
 これも、なかなかに上手なうたです。
 さあ、娘と夫に先をこされた女房ですが、あせればあせるほどうたが出てきません。
 考えても考えても、二人よりもうまい上の句が思いつかないのです。
 (どうしよう。このままでは、ぼたもちが・・・。あっ!)
 
   女房は、残ったぼたもちをいきなり口の中ヘ押し込むと、びっくりする二人を見ながら、 
  ♪このように、口いっぱいにほおばれば♪おもうようには、いうにいわれず
 と、もぐもぐやりながら、すっかり食ベてしまいました。
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
 
 
 
    
 
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