| 福娘童話集 > きょうの新作昔話 >なべのふた 2024年7月29日の新作昔話
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  イラスト : にしがきゆうこ  おはなしあっつこっつ
 
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 投稿者 「おはなしあっつこっつ」  おはなしあっつこっつ
 
 なべのふた
 北海道の民話 → 北海道情報
 
 ・日本語 ・日本語&中国語
 
  むかしむかし、ニシンで大漁に捕れることでさかえた北海道の江差(えさし→北海道おしま半島の日本海岸にある港町)に、しげ次郎という、とんちのきく男がいました。  
 
 
   ある日の事、しげ次郎がお腹を空かして町を歩いていくと、イモを煮ているおいしそうなにおいがただよってきました。 
  「おや? どこの家で煮ているんだ?」においをたどっていくと、知り合いの家の前に出ました。
 
  (こいつはいい。うまいことして、イモを食ってやろう)そう考えたしげ次郎は、
 「やあやあ、今日はお天気も良くて、気持ちが良いですな」
 
  と、あいさつをしながら、知り合いの家に近づいていきました。しげ次郎に気がついたこの家のおかみさんは、しげ次郎にイモを食べられては大変と、ナベにふたをして知らん顔です。
 
   しげ次郎は少し声をひそめて、おかみさんに言いました。「実はさっきな、アミ元の家の隣で、ものすごい夫婦げんかがあったんだ。これがひでえのなんの、こんなすごいけんかは見たことがねえ」
 
   するとおかみさんが、話しに興味を持って聞きました。 
  「ほう、そうね。して、どんなようすだったね?」しげ次郎はニヤリと笑うと、話を続けました。
 
  「まずは、親父さんがてんびん棒をふりあげて、母ちゃんになぐりつけた」 
  「そっ、それで?」「ところが、母ちゃんも負けてはいない。そばにあったナベのふたをパッと取って、てんびん棒をガチンと受け止めたんだ」
 
   しげじろうはそう言いながら、ナベのふたを取りました。 
   ナベの中では、イモがおいしそうに煮えています。「ありゃ、イモをにてたのか。
 あっ、そうそう、それでな。
 その母ちゃんも、イモを煮ておってな。
 親父のてんびん棒をナベのふたで受け止めておいて、もう片方の手でナベのイモを親父の口ヘ『むぎゅーっ!』て、押し込んだんだ。
 
   すると親父は、『あちちち。むぎゅーっ! あちちち、むぎゅーっ、あちちちっ・・・』」 
   しげ次郎は次々にイモを自分の口へ押し込んで、残らず食べてしまいました。 
  「はい、ごちそうさん。これが夫婦げんかのようすさ」 
   そう言って腹一杯にイモを食べたじげ次郎は、どこかへ行ってしまいました。  
 
  おしまい
   
 
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