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      2024年9月16日の新作昔話 
          
        ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
          
        絵は、マンガ・イラストコース1年生(⑯、星、羽、ミナモト、しゅが) 
         
ネズミとゾウ 
トルコの昔話 → トルコの国情報 
 
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朗読者:北海道芸術高等学校福岡サテライトキャンパス声優コース山本遥香 
 
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読 
【大人も子どもも聴くだけで眠れる】面白くて不思議な話 180分広告なし 
      
       
      
      
       むかしむかし、あるところに、一匹のネズミがいました。 
         そのネズミは、カガミを持っています。 
         それも魔法のカガミで、そのカガミをのぞくと誰でも自分が大きく偉く見えるのです。 
   
         毎日毎日、そのカガミをのぞいているネズミは、自分ほど大きくて偉いものは、どこを探してもいないと思い込みました。 
        
        そして仲間のネズミたちを、馬鹿にする様になりました。 
         それを見て、世の中の事をよく知っている年寄りのネズミが言いました。 
        
       「坊や。お前は自分が大きくて偉い生き物だといばっているそうだけど、それはとんでもない間違いさ。これをゾウが知ったら、大変な事になるよ」 
        「そのゾウって奴は、何者だ?」 
        
       「ゾウというのは、世界で一番大きな生き物でね。どんなに強い動物でもかなわないんだよ」 
        「うそだ! おれさまより強い奴がいてたまるか!」 
        
       ネズミはそう言うと、ゾウを探す旅に出かけました。 
        
       旅に出たネズミは、野原で緑色のトカゲに出会いました。 
        
       「おい。ゾウっていうのは、お前かい?」 
        「いいえ。わたしはトカゲよ」 
        「そうか。ゾウでなくてよかったな。ゾウだったら踏み潰してやるところだった」 
        「まあ、ゾウを踏み潰すですって?」 
         小さなネズミのいばり方があんまりおかしかったので、トカゲは思わず吹き出しました。 
        「何を笑う! いいか、おれさまは世界で一番大きくて偉い動物だぞ!」 
        
        ネズミは怒って、足を踏みならしました。 
         するとちょうどその時、ズシンズシンと地ひびきがしました。 
         緑色のトカゲは驚いて、石のかげに隠れてしまいました。 
        「えへっん。どんなもんだい」 
         ネズミは自分の足踏みが地ひびきを起こしたと思い、得意になってまた先に行きました。 
         しばらく行くと、今度はカブトムシに出会いました。 
        
       「おい。お前がゾウという奴か?」 
        「とんでもない。ぼくはカブトムシさ」 
        「そうか。ゾウでなくてよかったな。ゾウだったら踏み潰してやるところだった」 
         それを聞いて、カブトムシはクスッと笑いました。 
         ネズミは怒って、また足を踏みならしました。 
         けれども地面は、ピクリともしません。 
        (おや? おかしいな) 
        
               ネズミはもう一回、足を踏みらなしましたが、やはり地ひびきはおこりません。 
        (そうか、きっと地面がしめっているせいだな) 
         ネズミはそう思うと、先ヘ行きました。 
         そして今度は、木のそばでジッと座っている大きな動物に出会いました。 
        
       (大きいな。こいつこそ、ゾウらしいぞ。しかしジッとしているところを見ると、きっとこのおれさまを怖がっているんだな) 
         ネズミはそう思って、いばって聞きました。 
        「おい。お前がゾウか?」 
         それを聞いた大きな生き物は、ニヤリと笑って答えました。 
        「違うよ。わたしは世界で一番偉い者の仲良しだ。わたしはイヌだよ」 
        「世界で一番偉い者? それは何だ?」 
        「決まっている。それは人間さ」 
        
       「へえ。 
         とにかく、お前はゾウでなくて幸せだったな。 
         もしもゾウだったら、たちまち踏み潰してやるところだ。 
         何しろ世界で一番強いのは、このおれさまなんだからな」 
         それを聞いたイヌは、少しネズミをからかってやりました。 
        「確かに、そうかもしれないね、ネズミくん。 
         あの人間だって、きみたちに食べさせる為に、コメやムギを作っているんだもの」 
        「まあな」 
         ネズミは先を急いで、森の奥ヘやって来ました。 
        
        そこでネズミは、山の様に大きな物にぶつかりました。 
         足は木のみきの様に太くて、おまけに体の前の方にも長い尻尾がぶらさがっています。 
        
       「お前は、ゾウか?」 
         ネズミは、力一杯声を張り上げました。 
        「おや?」 
         ゾウは辺りを見回しましたが、ネズミがあんまり小さいので目に入りません。 
         そこでネズミは、大きな石によじ登りました。 
        
        ゾウはようやくネズミを見つけて、答えました。 
        「そうだ。わしはゾウだよ」 
        「そうか。おれさまは世界で一番強くて偉いネズミだ。今からお前を踏み潰してやる。覚悟しろ」 
         ネズミはふんぞり返って、偉そうに叫びました。 
         けれどもゾウは気にせず、そばの水たまりに鼻をつっこんで、シャワーの様に水をまき散らしました。 
        
       「ワッー!」 
         その水にネズミの小さな体は吹き飛ばされて、もう少しでおぼれそうになりました。 
        「なっ、なんだったんだ。今のは」 
         ネズミはやっとの事で、家に帰りつきました。 
        
               今度の旅で、世界には自分よりもずっとずっと大きなもの、強いものがいる事を思い知ったネズミは、それからというものほかのものをバカにしたり、いばったりしなくなりました。 
        
        ついでに、魔法のカガミをのぞく事もやめてしまいました。 
      おしまい 
         
           
          
        
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