| 福娘童話集 > きょうの新作昔話 >冒険したリス 2025年3月17日の新作昔話
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        Max 3840×2160 字幕「日本語」「英語」
 
 イラスト myi   ブログ sorairoiro
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 投稿者 「ぐっすり眠れる優しいおやすみ朗読」
 
 冒険したリス
 ハドソンの童話
 
 
        
          | ♪音声配信(html5) |  
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          | 音声 小林 巴(リス)/目黒 泉(その他) |   夏の終り、ある森にリスが住んでいました。リスはせっせとドングリを集めて、カシの木のすみかに運んでいました。
 その様子を見ていた小鳥が、リスに声をかけました。
 「やあ、リス君。さっきから何をしてるんだい?」
 「こんにちは、小鳥さん。ぼくは、冬ごもりの支度(したく)をしているのさ。冬は食べ物がないからね」
 いそがしそうに答えるリスに、小鳥は笑いました。
 
 「アハハハハ。そんな事をしなくても、冬が来る前に南の国へ行けばいいのに。南の国は木の実も果物もどっさりあって、食べる物に不自由しないよ」
 「へえ! その南の国って、どこにあるんだい?」
 「南の国はね、あの山の向こうだよ。まあ、二週間もあれば大丈夫」
 「あの山の向こうかあ。それでさ・・・」
 リスがもっと聞こうとすると、めんどくさくなった小鳥はバタバタと飛んで行ってしまいました。
 
   リスはボンヤリと、遠い山をながめました。「寒い冬を、あたたかく過ごせたらいいだろうなあ。木の実も果物も、どっさりだって。・・・いいなあ」
 リスは自分も、南の国へ行きたくなりました。
 
 やがて秋が来ましたが、リスはドングリを集めるのも、あたたかい寝床(ねどこ)を作るのもやめて、毎日南の国で暮らす事ばかり考えていました。
 そうして、カシの木がすっかり葉っぱを落としてしまうと、
 「南の国へ行こう!」
 
  と、本当に南へと出発(しゅっぱつ)したのです。リスは森を抜け、走って走って山のふもとにたどり着きました。
 もう夕方で、足はクタクタにくたびれました。
 
  「今夜中に山のてっぺんにのぼって、南の国に『おはよう』のあいさつをするんだ!」リスはそう言って自分をはげますと、一歩ずつ山をのぼって行きました。
 けれども足が痛い上に、お腹もペコペコです。
 おまけに夜風が、こおりそうな寒さです。
 「ああ、もう、だめだ・・・」
 リスは大きな石を見つけて、そのかげで丸くなりました。
 そしてため息をついたとたん、気がつきました。
 
  「そうか、小鳥たちは空を飛べるから、くたびれないで南の国へ行けるんだ」その時です。
 リスは背中に、ナイフでさされたような痛みをおぼえました。
 そして体が浮き上がり、あっと言う間に空高くつれさられたのです。
 
   リスをつかまえて飛んだのは、恐ろしいトンビでした。リスは逃げ出そうと思いましたが、クタクタであばれる元気もありません。
 もっとも本当にあばれたら、地面に落とされて死んでしまいますが。
 「どっちにしても、ぼくは死んじゃうんだ」
 その時、ビュー! と風が吹いたかと思うと、別のトンビがやって来て怒鳴りました。
 「やい、痛い目にあいたくなかったら、そのエサをこっちへよこしな!」
 「じょ、冗談じゃない!」
 リスをつかまえたトンビは逃げましたが、リスが重くて思うように飛べません。
 たちまちトンビとトンビが、夜空でたたかいを始めました。
 リスは暗い夜空をツメでつかまれたままふりまわされ、痛さと怖さで何度も気絶(きぜつ)しそうになりました。
 そのうちにリスをつかまえていたトンビが背中をつつかれて、思わずツメをゆるめたのです。
 「うわぁー!」
 
   リスは地面へと、まっさかさまに落ちて行きました。「もう、だめだ!」
 リスは気を失いましたが、何かにぶつかって、ハッと目を開けました。
 
   運が良い事に、リスは森の木の枝にひっかかったのです。リスは力をふりしぼって、木をおりました。
 
   そしてやっと地面におりて、リスが木を見上げてみると、「ああっ、ここは!」
 そこは今まで住んでいた森で、落ちた木はリスの家のカシの木だったのです。
 リスは大喜びで、作りかけの寝床(ねどこ)で丸くなりました。
 
  「ああ、いい気持ち! 冬は寒くても、やっぱり自分の家が一番だ!」リスは安心して、グッスリと眠りました。
 おしまい  
 
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