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第250話

天女の妻

天女 ( てんにょ ) ( つま )
中国の昔話中国の情報

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投稿者 眠れる森のくま

♪音声配信(html5)
朗読者 : スタヂオせんむ

 むかしむかし、 雲の上 ( くものうえ ) 天上 ( てんじょう ) に、 七人 ( 7にん ) ( うつく ) しい 天女 ( てんにょ ) 姉妹 ( しまい ) ( ) んでいました。
  天女 ( てんにょ ) たちは、 天上 ( てんじょう ) ( かみ ) さまの ( むすめ ) です。
  天女 ( てんにょ ) たちの 仕事 ( しごと ) ( くも ) ( よう ) ( しろ ) ( うつく ) しい ( ぬの ) をおる ( こと ) で、その ( ぬの ) から ( つく ) られた 天衣 ( てんい ) ( ) ばれる 着物 ( きもの ) をはおれば、 ( だれ ) でも 自由 ( じゆう ) ( そら ) ( ) べるのです。

 ある ( ) ( こと ) 一番 ( いちばん ) ( した ) ( いもうと ) 天女 ( てんにょ ) ( ) いました。
「ねえ、お ( ねえ ) さま。この 天衣 ( てんい ) をはおって、 地上 ( ちじょう ) ( かわ ) 水浴 ( みずあ ) びをしましょうよ」
「でも、 地上 ( ちじょう ) には ( おそ ) ろしい 人間 ( にんげん ) がいるのですよ。もしも 人間 ( にんげん ) ( つか ) まったりしたら」
大丈夫 ( だいじょうぶ ) よ。 人間 ( にんげん ) がやって ( ) たら、 天衣 ( てんい ) ( そら ) ( ) んで ( ) げてしまえば」
「そうね。では、 地上 ( ちじょう ) ( ) きましょう」
 こうして 七人 ( 7にん ) 天女 ( てんにょ ) たちは、 天衣 ( てんい ) をはおると 地上 ( ちじょう ) へと ( ) かいました。

 さて、 地上 ( ちじょう ) では 一人 ( ひとり ) 若者 ( わかもの ) が、 年老 ( としお ) いた ( うし ) 一緒 ( いっしょ ) 貧乏 ( びんぼう ) ( ) らしをしていました。
  両親 ( りょうしん ) ( はや ) くに ( ) くした 若者 ( わかもの ) は、しばらくのあいだ 兄夫婦 ( あにふうふ ) 三人 ( 3にん ) ( ) らしていたのですが、やがて 兄夫婦 ( あにふうふ ) 若者 ( わかもの ) 毎日 ( まいにち ) いじめるようになり、
「この ( ) いぼれ ( うし ) をやるから、お ( まえ ) ( ) ( ) け!」
と、 ( ) どもの ( ころ ) から ( とも ) だちだった ( うし ) 一緒 ( いっしょ ) に、 ( いえ ) 追い出 ( おいだ ) されてしまったのです。
  若者 ( わかもの ) ( うし ) 細々 ( ほそぼそ ) ( ) らしていましたが、ある ( ) 突然 ( とつぜん ) 、その 年老 ( としお ) いた ( うし ) 人間 ( にんげん ) 言葉 ( ことば ) でこう ( ) ったのです。
「ご 主人 ( しゅじん ) さま。
  今日 ( きょう ) 天上 ( てんじょう ) ( うつく ) しい 天女 ( てんにょ ) たちが、 地上 ( ちじょう ) ( ) りて ( ) 水浴 ( みずあ ) びをするでしょう。
 その 天女 ( てんにょ ) 天衣 ( てんい ) ( ぬす ) んでしまえば、 天女 ( てんにょ ) ( てん ) ( もど ) れずあなたの ( つま ) になるでしょう」
 それを ( ) いた 若者 ( わかもの ) は、 ( うし ) ( おし ) えられた ( かわ ) のほとりで 天女 ( てんにょ ) たちが ( ) りて ( ) るのをじっと ( ) っていました。
 すると ( うし ) ( ) った ( とお ) り、 天衣 ( てんい ) をまとった 七人 ( 7にん ) 天女 ( てんにょ ) たちがフワフワと 地上 ( ちじょう ) 降り立 ( おりた ) ったのです。
  七人 ( 7にん ) 天女 ( てんにょ ) たちは ( ) ていた 天衣 ( てんい ) ( まつ ) ( ) にかけると、 ( たの ) しそうに 水浴 ( みずあ ) びを ( はじ ) めました。
  若者 ( わかもの ) はそっと ( まつ ) ( ) ( ちか ) づくと、その 天衣 ( てんい ) ( ぬす ) もうとしました。
 すると 天衣 ( てんい ) をかけていた ( まつ ) ( ) が、
天女 ( てんにょ ) さま。 人間 ( にんげん ) 天衣 ( てんい ) ( ぬす ) もうとしていますよ!」
と、 大声 ( おおごえ ) でしゃべったのです。
「きゃー!  人間 ( にんげん ) !」
  天女 ( てんにょ ) たちはあわてて 走り出 ( はしりだ ) すと 若者 ( わかもの ) よりも ( さき ) 自分 ( じぶん ) たちの 天衣 ( てんい ) をつかんで、それをまとって ( てん ) へと ( のぼ ) って ( ) きました。
 でも、 一番 ( いちばん ) ( とお ) くで 水浴 ( みずあ ) びをしていた 一番 ( いちばん ) ( した ) ( いもうと ) 天女 ( てんにょ ) だけが ( おく ) れて、 若者 ( わかもの ) 天衣 ( てんい ) ( うば ) われてしまったのです。
「お ( ねが ) いです。 天衣 ( てんい ) ( かえ ) してください! それがないと、 天上 ( てんじょう ) ( かえ ) れないのです!」
  天女 ( てんにょ ) ( たの ) みましたが、 若者 ( わかもの ) 天衣 ( てんい ) ( かえ ) そうとはしません。
 それどころか、 天女 ( てんにょ ) ( ) ( まえ ) 大切 ( たいせつ ) 天衣 ( てんい ) ( ) やしてしまったのです。
「ああ、 天衣 ( てんい ) が・・・。 大切 ( たいせつ ) 天衣 ( てんい ) が・・・」
  泣き崩 ( なきくず ) れる 天女 ( てんにょ ) に、 若者 ( わかもの ) ( ) いました。
「わたしは 貧乏 ( びんぼう ) ですが、あなたの ( ため ) 一生懸命 ( いっしょうけんめい ) ( はたら ) きます。だから、わたしの ( つま ) になって ( くだ ) さい」
  天衣 ( てんい ) ( ) やされて 天上 ( てんじょう ) ( かえ ) れなくなった 天女 ( てんにょ ) は、 仕方 ( しかた ) なく 若者 ( わかもの ) ( つま ) になりました。

  若者 ( わかもの ) 天女 ( てんにょ ) との 約束 ( やくそく ) ( どお ) り、 田畑 ( たはた ) ( たがや ) して 一生懸命 ( いっしょうけんめい ) ( はたら ) きました。
 そのうちに 天女 ( てんにょ ) 若者 ( わかもの ) ( こと ) ( ) きになって、 得意 ( とくい ) のはたをおり ( はじ ) めるとそれを ( ) って 生活 ( せいかつ ) ( たす ) けました。
 やがて 二人 ( ふたり ) ( あいだ ) には 息子 ( むすこ ) ( むすめ ) 二人 ( ふたり ) ( ) どもが ( ) まれ、 四人 ( 4にん ) ( しあわ ) せな 毎日 ( まいにち ) ( ) ごす ( よう ) になりました。

 ところがある ( ) ( こと ) 若者 ( わかもの ) 畑仕事 ( はたけしごと ) から ( いえ ) ( かえ ) ってみると、 ( いえ ) には ( つま ) 姿 ( すがた ) がなく、 ( のこ ) された 二人 ( ふたり ) ( ) どもが ( ) きじゃくっているのです。
( つま ) は?  ( つま ) はどこへ ( ) ったんだ?」
  若者 ( わかもの ) 天女 ( てんにょ ) 姿 ( すがた ) ( さが ) していると、 年老 ( としお ) いた ( うし ) 若者 ( わかもの ) ( ) いました。
「ご 主人 ( しゅじん ) さま。 ( さき ) ほど 天上 ( てんじょう ) 神兵 ( しんぺい ) がやって ( ) て、 ( おく ) さまを 天上 ( てんじょう ) 連れ帰 ( つれかえ ) ってしまったのです」
天上 ( てんじょう ) に! そんな・・・」
「ご 主人 ( しゅじん ) さま。 ( いま ) すぐに、 ( おく ) さまを ( ) いかけるのです」
「しかし、 天上 ( てんじょう ) にはどうやって ( ) けばいいのだ?  ( そら ) ( ) 天衣 ( てんい ) は、 ( ) やしてしまったぞ」
( ひと ) つだけ、 方法 ( ほうほう ) があります。
 それはわたしを ( ころ ) して ( かわ ) をはぎ、その ( かわ ) をまとうのです。
  ( なが ) ( ) きた ( うし ) ( かわ ) には、 ( そら ) ( ) ( ちから ) がありますから」
「そんな、お ( まえ ) ( ころ ) すなんて」
「いいのです。
  年老 ( としお ) いて ( はたら ) ( こと ) 出来 ( でき ) ないわたしを、あなたと ( おく ) さまは 大切 ( たいせつ ) にしてくださいました。
  ( わたし ) 出来 ( でき ) るご 恩返 ( おんがえ ) しは、これしかないのです。
 さぁ、 ( はや ) ( ころ ) しなさい」
「しかし・・・」
  天女 ( てんにょ ) 結婚 ( けっこん ) 出来 ( でき ) 二人 ( ふたり ) ( ) どもを ( さず ) かったのは、 ( すべ ) てこの ( うし ) のおかげだと ( おも ) うと、 若者 ( わかもの ) にはとうてい ( うし ) ( ころ ) ( こと ) なんて 出来 ( でき ) ません。
  若者 ( わかもの ) ( まよ ) っていると、
「ご 主人 ( しゅじん ) さま。どうぞ、お ( しあわ ) せに」
  ( うし ) はそう ( ) うと、 自分 ( じぶん ) ( はしら ) ( つよ ) ( あたま ) ( ) ちつけて ( ) んでしまいました。
「ありがとう。お ( まえ ) ( おん ) は、 一生 ( いっしょう ) ( わす ) れないよ」
  若者 ( わかもの ) ( ) きながら ( うし ) ( かわ ) をはいでまとうと、 二人 ( ふたり ) ( ) どもを ( ) れたかごを ( ) って ( てん ) へと ( のぼ ) って ( ) きました。

  若者 ( わかもの ) たちが 雲の上 ( くものうえ ) 天上 ( てんじょう ) ( ) いてみると、 ( とお ) くの ( ほう ) 神兵 ( しんぺい ) 連れ去 ( つれさ ) られていく 天女 ( てんにょ ) 姿 ( すがた ) ( ) えました。
( つま ) よ!  ( たす ) けに ( ) たぞー!」
「あなたー!」
  天女 ( てんにょ ) 神兵 ( しんぺい ) ( ) をふりほどくと、 若者 ( わかもの ) たちの ( ほう ) ( はし ) ってきました。
  若者 ( わかもの ) ( ) どもたちも、 天女 ( てんにょ ) ( ほう ) ( はし ) っていきます。
 そして 天女 ( てんにょ ) 若者 ( わかもの ) たちが 抱き合 ( だきあ ) おうとしたその ( とき ) ( てん ) 一角 ( いっかく ) から 巨大 ( きょだい ) ( ) ( ) びて ( ) て、 天女 ( てんにょ ) 若者 ( わかもの ) たちの ( あいだ ) にさっと 一筋 ( ひとすじ ) ( せん ) ( ) きました。
 それは 天上 ( てんじょう ) ( かみ ) ( いもうと ) である 西王母 ( せいおうぼ ) ( ) で、 西王母 ( せいおうぼ ) ( あたま ) につけていた ( きん ) のかんざしを ( ) いて ( せん ) ( ) いたのです。
  西王母 ( せいおうぼ ) ( ) いた ( せん ) からたちまち ( みず ) があふれ ( ) して 大河 ( たいが ) となり、 天女 ( てんにょ ) 若者 ( わかもの ) たちの ( あいだ ) ( おお ) きく ( ひろ ) がりました。
人間 ( にんげん ) よ、すぐに 立ち去 ( たちさ ) りなさい!  地上 ( ちじょう ) 世界 ( せかい ) ( かえ ) るのです!」
  西王母 ( せいおうぼ ) 言葉 ( ことば ) に、 若者 ( わかもの ) ( ) いました。
( いや ) だ!  ( たと ) 人間 ( にんげん ) であっても、 天女 ( てんにょ ) はわが ( つま ) 絶対 ( ぜったい ) ( かえ ) るものか!」
 しかし 大河 ( たいが ) ( なが ) れは ( はや ) くて、 ( わた ) ( こと ) 出来 ( でき ) ません。
 すると、 ( ) どもたちが ( ) いました。
「そうだ、ひしゃくで ( かわ ) ( みず ) をすくい ( ) ろうよ」
「よし、そうしよう」
  若者 ( わかもの ) 二人 ( ふたり ) ( ) どもたちは、 大河 ( たいが ) ( みず ) 一杯 ( いっぱい ) 一杯 ( いっぱい ) すくい ( はじ ) めました。
 これを ( ) 天上 ( てんじょう ) ( かみ ) さまが、 若者 ( わかもの ) たちに ( ) いました。
「そなたたちの、 天女 ( てんにょ ) ( おも ) 愛情 ( あいじょう ) 素晴 ( すば ) らしい。よって 一年 ( いちねん ) 一夜 ( いちや ) だけ、そなたたちが ( ) ( こと ) ( ゆる ) してやろう」
 こうして 天女 ( てんにょ ) 若者 ( わかもの ) たち 親子 ( おやこ ) は、 毎年 ( まいとし ) 七月 ( しちがつ ) 七日 ( なのか ) ( よる ) にだけ ( ) ( こと ) 出来 ( でき ) ( よう ) になったのです。

  ( いま ) でも 天の川 ( あまのがわ ) をはさんで、 若者 ( わかもの ) である『 彦星 ( ひこぼし ) 』と、 天女 ( てんにょ ) である『 織姫星 ( おりひめほし ) 』を ( ) ( こと ) 出来 ( でき ) ます。
 その『 彦星 ( ひこぼし ) 』の ( となり ) ( ちい ) さな ( ふた ) つの ( ほし ) ( なら ) んでいますが、その ( ふた ) つの ( ほし ) 二人 ( ふたり ) ( ) どもだと ( ) われています。

おしまい

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