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第254話

不思議の国のアリス 第4/20話 イート ミー《eat me》

不思議の国のアリス
イラスト:ジョン・テニエル

イート ミー 《eat me》

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「葉月優蘭」  葉月優蘭

 小さなドアへ向かったアリスですが、ドアのところまで行った時、あの小さな金のカギを忘れてきたのに気がつきました。
 そこでカギを取りにテーブルへ戻ったのですが、小さくなったアリスではテーブルの上に手が届きません。
 ガラスのテーブルなのでカギは下からでもよく見えるのですが、ガラスのテーブルはつるつるすべって、よじ登ろうとしてもだめでした。
「だめだわ。どうしても登れない」
 アリスは悲しくなりましたが、ここで泣くようなアリスではありません。
「今は泣いていても、何の役にも立たないわ。
 それより、どこかに何かないかしら?
 ・・・あら?」
 アリスはテーブルの下に、小さなガラスの箱があるのに気がつきました。
「さっきまでなかったのに。・・・まあ、いいか」
 開けてみると、中には小さなクッキーが入っていました。
 小さなクッキーには小さな小さな干しぶどうで、《eat me》と書いてあります。
「《eat me》。『わたしをお食べなさい』か。
 食べると、どうなるのかしら?
 今度は、大きくなるのかしら?
 それとも、もっと小さくなるのかしら?
 ・・・まあいいわ。
 食べて大きくなれば、テーブルのカギに手が届くし。
 もっと小さくなれば、あのドアの下からもぐり込めるわ」
 干しぶどうはちょっと苦手ですが、アリスはがまんしてクッキーを食べました。
 すると今度は、アリスの体がどんどん大きくなっていったのです。
 もとの身長を通りこして、アリスはまだまだ大きくなります。
「あれあれ?
 今度は世界一大きな望遠鏡みたいに、あたしが伸びていくわ。
 足も、どんどん離れていく。
 あたしの足さん、さようなら」
 アリスが自分の足にさよならを言った時、ようやく大きくなるのが止まりました。
「よかった。足にはもう会えないかと思った」
 アリスはテーブルの上の金のカギを取ると、急いでドアのところへ行きました。
 でも今のアリスは、3メートルをこえる大女です。
 体が大きすぎてドアを通りぬけるどころか、横に寝ころんで片目でお庭をのぞくのがやっとです。
 アリスは座り込むと、また悲しくなって涙を一粒こぼしました。

おわり

続きは第5話、「涙の池」

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不思議の国のアリス

不思議の国のアリス
イラスト 「愛ちん(夢宮愛)」  運営サイト 「夢見る小さな部屋」

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