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第 42話

ウシ小屋に逃げ込んだシカ

ウシ小屋に逃げ込んだシカ
イソップ童話 → イソップ童話とは?

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 : 神栖星花研究所 「神栖星花研究所

 猟犬に追い回されたシカが、農場へ逃げ込んでウシ小屋に隠れました。
「ウシさん、どうかぼくをかくまって下さい。猟犬がどこかへ行けば、ぼくもすぐに出て行きますから」
 シカをかわいそうに思ったウシは、シカがしばらく隠れるのを許しました。
 シカを追っていた猟犬は、しばらくするとどこかへ行ってしまいました。
 しかしシカは小屋から出ようとはせず、ウシの飼葉を食べています。
 ウシはシカが自分の飼葉を食べるのを見て、少しあきれた様に言いました。
「・・・まあ、いいけどね」

 しばらくすると牧場で雇われている従者がウシ小屋に入ってきました。
 シカはびっくりしましたが、ウシが大きな体でシカを隠してくれたので、従者はシカに気づかず小屋を出て行きました。
 助けてくれたお礼を言うシカに、ウシが言いました。
「シカくん、そろそろ逃げた方がいいよ」
 シカは飼葉を食べながら言いました。
「もう少しだけ待ってくれないかな。また猟犬に追われても逃げられる様に、もう少し腹ごしらえをしたいんだ」
 ずうずうしいシカに、ウシはあきれた様に言いました。
「・・・まあ、いいけどね」
 夕方、従者がまた小屋にやって来ましたが、今度もウシが大きな体でシカを隠してくれたので、従者はシカに気づかず小屋を出て行きました。
 ウシがシカに言いました。
「シカくん、本当にもう逃げた方がいいよ。ここには、目が百個ある様な、何でも見透かす奴がいるから」
 しかしシカは、もう少しだけ腹ごしらえをすると言って飼葉を食べるのを止めませんでした。
「・・・まあ、いいけどね」
 その時、農場主が従者を連れて牛小屋に入ってきました。
 ウシは農場主と従者から見えないようにシカを隠してやりましたが、牧場主は少なくなった飼葉を見て従者に言いました。
「なぜ、かい葉がこんなに少ないんだ? お前たちは一体何をしているんだ!」
 農場主は、ウシ小屋の中を詳細に調べました。
 そしてシカをあっさり見つけると、従者に捕まえて殺すように命じました。

 いつまでも行動せずにだらだらしていると、いつかこのシカの様な事になります。


おしまい

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