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第 29話

てんぐのヒョウタン

天狗のヒョウタン

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 ごえもん

 むかしむかし、あるところに、賭け事でお金をもうける、ばくち打ちがいました。
 でもそのばくち打ちは、ばくちで大負けをして、一文無しになってしまいました。

 さて、夜が明けかかった頃、村のお宮(みや)の大松の下を通りかかると、その松の枝に一人の天狗が座っていて、ばくち打ちに声をかけました。
「よう、ばくち打ち、今日もまた負けたのか?」
 するとばくち打ちは、負けたと認めるのが悔しくて、
「これは、誰かと思ったら天狗さまですか。なに、今日は負けたのではなく、相手にお金を貸してやっただけです」
と、言うと、天狗は大笑いしました。
「はっはっは。そうか、そうか。負けたのではなく、貸してやったのか。それは、うまい言い方だ。・・・ときに、ばくち打ち。お前が一番怖い物はなんだ?」
「はいはい、何といっても、この世にぼた餅より怖い物はありません。しかし天狗さま、あなたにも怖い物はあるのですか?」
 これを聞くと、天狗が言いました。
「わしは、鉄砲だな。別に飛んでくる玉は怖くないが、あの大きな鉄砲の音は苦手だ」
 それから天狗は、ばくち打ちを困らせてやろうと、松の上からぼた餅をボタボタと落としてきました。
 それを知ったばくち打ちは、わざと震えた声をあげると、
「あーっ! ぼた餅だ! これは怖い! これは恐ろしい! これは大変だー!」
と、うろたえている振りをしながら、そのぼた餅を次から次へと食べてしまいました。
 そして、お腹がいっぱいになったとき、
「ズドーン!」
と、大きな声を出して、鉄砲の真似をしました。
 すると天狗はびっくりして、羽をバタバタさせながら逃げていきました。
「はっはっは。こんなに簡単にだまされるとは」
 ばくち打ちが笑いながら、ふと上を見ると、天狗がいた松の枝にヒョウタンが一つぶらさがっています。
 それは『天狗のヒョウタン』といって、欲しい物を言いながら振ると、何でも好きな物を出してくれる宝物です。
「こいつは、良い物が手に入ったわ」
 それからばくち打ちはばくちをやめて、天狗のヒョウタンのおかげで大金持ちになったそうです。

おしまい

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