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第 46話

カッパの妙薬(みょうやく)

カッパの妙薬(みょうやく)

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】

 むかしむかし、ある山里の村で、子どもたちが大勢集まって相撲をしていました。
 ところが子どもたちの中に、一人だけ見なれない子どもがいます。
 この子は背の低くて、ひしゃげたような顔をした、とても変わった子どもでしたが、相撲がとても強いのです。
 二人でかかっても、三人でかかっても、五人でかかっても勝てません。
「何という、強い奴じゃ」
「まるで、本物の相撲取りの様じゃ」
「こんな時に、五作がおったらな」
 みんながくやしがっていると、うわさの五作がやってきました。
 五作は、去年も今年も、鎮守(ちんじゅ)さまの子ども相撲で優勝しています。
 相撲なら、大人にだって負けません。
「さあ、この五作と勝負だ!」
「よーし。のこった!」
 見なれない子どもと五作が、がっちりと組みました。
 二人は、しばらくもみあっていましたが、五作が相手を土俵ぎわまで攻め寄せると、
「やっ!」
と、五作のひと声で、見なれない子どもは土俵の外へ投げ出されました。
 負けた子どもは、ゆっくりと起き上がると五作に言いました。
「五作よ。お前、仏さまにそなえたまま食ったな」
「ああ、食ったぞ」
「そうか。では明日、仏さまのまま食わずに来い。そうすりゃ、きっと、おれが勝ってみせる」
「よし、わかった。・・・しかし、お前は、どこの者じゃ?」
 するとその子どもは、つぶやくように、
「おれは、人間ではない。四方川(よもがわ)に住んでいる者じゃ」
と、言って、そのまま姿を消してしまいました。
(変な奴だな)
 さて、五作は家に帰ると、お父さんに今までの事を全部話しました。
 するとお父さんは、何か思いあたる事でもあったのか、
「ほう。そんな子がおったのか。なら、明日は仏さまのままを食わんと行け。その代わり」
と、五作の耳に、何やらささやきました。

 次の日、約束通り、五作は相撲場にやってきました。
 すると、昨日の子どもは、もう来ていました。
 そしてどこかで話を聞いたのか、大勢の子どもたちや若者たちが集まっています。
 昨日の子どもは、五作に小さい声で聞きました。
「お前、確かに、仏さまのままを、食ってこなかったか?」
「約束だ、食ってない」
 それを聞くと、相手の子どもは安心してにっこり笑いました。
「なら、今日はおらの勝ちだ」
 そして行司(ぎょうじ)が軍配(ぐんばい)をひくと、いきなり五作が相手の首にしがみついて、相手の頭をゆすぶりました。
 すると何やら、ピチャピチャと冷たい物が五作の顔にかかります。
 そして相手が、よろけたところを、
「えいっ!」
と、両手で突き放しました。
 突き放された相手は尻もちをついて、そのまま倒れてしまいました。
 その時、見ていた子どもたちが叫びました。
「あれは、カッパじゃ!」
「やっちまえ!」
 見物の大人も子どもも、その子どもを殴ったり蹴ったりするので、五作が止めようとしましたが、みんなは止めてくれません。
 そして、若者たちの一人が、
「この野郎。カッパ汁にしてやるわ」
と、太い棒を振り上げた時、
「おーい。待ってくれえー」
と、五作のお父さんが、カッパと若者の間に飛び込んで来ました。
 そしてお父さんはみんなをなだめると、財布から、なけなしのお金を取り出して、カッパを買い取ったのです。
 そして、五作と二人して四方川へ連れて行くと、そこにカッパを逃がしてやりました。

 すると、その晩のです。
 五作の家に、年寄りのカッパがたずねてきました。
「今日は、かわいい孫の命をお助けくださって、ありがとうございます。そのお礼に、カッパの妙薬をお教えいたします」
と、年寄りのカッパは、誰も知らない薬の作り方を教えてくれたのです。
 五作たちが、その薬を作って試してみると、それは打ち身やねんざに、びっくりするほど良く効く薬でした。
 そこで、たくさんの人が五作の家へ薬を買いに来るようになり、五作の家はとてもお金持ちになったということです。

おしまい

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