福娘童話集 > 日本昔話 > その他の日本昔話 >小判の虫干し 
      第 91話 
          
          
         
小判の虫干し 
       
      ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
      
       
      制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】 
       むかしむかし、あるところに、なまけ者の寝太郎という若者がいました。 
 寝太郎は、その名前の通り、一日中ごろごろと寝ているだけで、働こうとはしません。 
 食べる時だけ起きてきて、お腹いっぱいになったら、またごろごろと寝てしまうのです。 
 寝太郎のお母さんは、とうとう怒って怒鳴りました。 
「寝てばっかりいないで、山へでも行って働いておいで!」 
 さすがの寝太郎も、のっそり起きあがると、ぶらぶらと山へ出かけて行きました。 
 でも、山へ行っても何もせず、海の見える所まで登ると、 
「うん、ここがいい」 
と、ごろんと草の上に横になりました。 
 すると、どこからか、 
♪ネズミのお宝、虫干しだ 
♪今日も小判を、虫干しだ 
と、かわいい声が聞こえてきます。 
「なんだ?」 
 寝太郎が見てみると、草むらからネズミたちが小判をくわえて、ぞろぞろと出て来るではありませんか。 
 そして、チャリーン、チャリーンと、小判をあたり一面に並べていくのです。 
「へへーっ、きれいだなあ、おもしろいなあ」 
 寝太郎はネズミたちが小判を運んで来るのを、ニコニコしながら見ていました。 
 やがて日がかげって、夕方になりました。 
 するとネズミたちは、 
♪ネズミのお宝、虫干しだ 
♪お日さま沈んで、もう終わり 
と、言って、小判をくわえると、また草むらに次々と帰って行きました。 
 そして小判が全部草むらに消えると、寝太郎はのっそりと起きて 
「ああ、ゆかいだった。おらも帰ろ」 
と、山を下りてもどりました。 
 家で待っていたお母さんは、何も持って帰らない寝太郎に、大きなためいきをつきました。 
「まったく、しょうのない息子だねえ」 
 するとそのとき、戸がガタガタと開いて、見たこともない娘さんが入って来ました。 
 娘さんは寝太郎に、小さく頭を下げると、 
「寝太郎さん。今日は小判の虫干しの見張り番をしてくれて、ありがとう。これはそのお礼です」 
と、お盆にいっぱいの小判を置いていったそうです。 
      おしまい  
         
         
        
        
       
     |