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 第 61話
 
  
 兄弟島
 長崎県の民話 → 長崎県の情報
  長崎県の九州本島(本土)と五島列島の間にある海域は角力灘(すもうなだ)と呼ばれ、大角力(おおずもう)、小角力(こずもう)と言う二つの小さな島が兄弟島と呼ばれています。これは、その兄弟島にまつわるお話です。
 
 ある海辺の村に、二人の息子を持った漁師が住んでいました。
 その漁師は気の荒い海の男たちの中でも特に気が荒く、二人の息子もそれに輪を掛けた様に気が荒くてけんかばかりしていました。
 
 ある日の事、魚がたくさん取れた漁師は、魚をミカンと取り替えて帰ってきました。
 二人の息子はミカンが大好きなので、きっと喜ぶ事でしょう。
 そして漁師が同じ数のミカンを二人の息子に分け与えると、その途端に二人の息子は大げんかを始めたのです。
 「お前の方が多い、ミカンをもっと寄こせ!」
 「何を言う、ミカンは同じ数だ! それより、そっちのミカンは大きい物ばかりだ。そっちこそ、ミカンをもっと寄こせ!」
 「いや、お前が寄こせ!」
 「そっちこそ寄こせ!」
 取っ組み合いをする息子たちを父親は止めに入りましたが、息子たちはけんかを止めるどころか父親に文句を言う始末です。
 「親父が悪い! ミカンを少ししか持ってこないからだ!」
 「そうだ! ミカンがもっとあれば、けんかなどしないんだ!」
 これには父親も腹を立てて、魚をさばく包丁を振り上げました。
 「このガキども! 父親に文句を言うとは何事だ!」
 そして父親は振り上げた包丁で兄の腹を切り、弟の肩を切って二人を殺しました。
 そして二人の死体を海に放り投げたのです。
 
 二人の死体は沖へ沖へと流れていき、翌日に二つの島になりました。
 こうして出来た二つの島が兄島と弟島で、兄島はお腹をえぐり取られた様な形をしており、弟島は肩を切られた様な形をしています。
 おしまい   
 
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