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2月9日の日本民話

日見(ひみ)のキツネ

日見(ひみ)のキツネ
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、日見(ひみ)と呼ばれる峠に、イタズラギツネが六匹も住んでいました。
 このキツネは人間に化けるのが得意で、村人たちはいつも化かされて困っていました。
 ある者は、白い花の咲くソバ畑を川と思わされて、
「川か。着物が濡れるといかんな」
と、ソバ畑をふんどし姿で渡されました。
 またある者は、臭い肥だめをお風呂と思わされて、
「ああ、ええ湯じゃ。気持ちいいのう」
と、首までつかったりしたのです。

 さて、ある男が峠のキツネ話を聞いて、一つ金もうけをしてやろうと考えました。
 そしてキツネの好物の油あげをたくさん持って、峠にやって来ました。
「おーい、キツネ。お前らに食い物を持って来たぞ。早く出て来いや」
 男がそう言うと、どこからか六匹のキツネが出て来ました。
「おお、良く来てくれた。
 お前たちが、噂の化け上手のキツネか。
 実はな、お前たちの化け具合を見たくて、こうして土産を持って来たんだ。
 どうじゃ、一つわしに、人間に化けるところを見せてくれんか?」
 男が油あげを差し出しながらキツネに頼むと、その中の一番大きなキツネが、
「それなら、一回だけだぞ」
と、他のキツネに合図を送って、あっと言う間に六人の若者に化けたのです。
「おおっ。こりゃ、見事な物だ」
 男は手を叩いて喜ぶと、キツネの若者に言いました。
「見事な化け方を見せてくれた礼に、町でうまい物を食わせてやろう。
 ・・・けど、そうなると男よりも、きれいな女の方が良いな。
 お前たち、男に化けるのはうまいが、きれいな女には化けられるか?
 ・・・まあ、出来ないなら無理にとは言わんが」
 それを聞いたキツネは、腹を立てて、
「きれいな女に化けるくらい、簡単な事だ。見とれよ」
と、今度は、美しい女に化けたのです。
「おおっ、見事、見事! こんなにきれいな女は、人間にもおらんぞ」
 男は大喜びでキツネたちを連れて、長崎の町にやって来ました。
 キツネの化けた六人の女はとても美人で、町の男たちは誰もが見とれてしまいます。
 男は丸山の遊郭(ゆうかく)に行くと、キツネが化けた女たちを売り飛ばしてしまいました。
 それからキツネに約束のご馳走を食べさせると、自分はたんまりと手に入れたお金を持って帰ってしまったのです。

 次の朝、女郎屋(じょろうや)の主人は、六人の部屋をのぞいてびっくり。
 何とふとんの上には、大きな六匹のキツネがねまき姿で寝ているのです。
「このいたずらギツネめ! よくも騙したな! 金を返せ!」
 主人は家の者を呼ぶと、寝ていたキツネたちに殴りかかりました。
「コン、コン、コーン!」
 さんざんに殴られたキツネたちは、悲鳴を上げながら日見の峠へ逃げ帰りました。
 そしてこれにこりたのか、このキツネたちは二度と人間を化かす事はなかったそうです。

おしまい

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