|
|
福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話 >四郎と猫
2月23日の日本民話
四郎と猫
鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報
むかしむかし、とてもとんちの上手な、四郎という男がいました。
ある朝の事、四朗は朝ご飯を食べようと、お膳の上にご飯を用意したのですが、貧乏なので、おかずを用意する事が出来ません。
「いつもの事ながら、おかずのないご飯というのは、さみしいものだな。
たまには焼き魚の一つも食べたいものだ。
何とかして、魚を手に入れる方法はないだろうか?」
そう考えた四朗は、ふと、この村の金持ちのだんなが、大の猫好きなのを思い出しました。
「そう言えば、そろそろだんなが散歩でこの家の前を通る時間だな。
・・・だんなは、猫が好き。
・・・猫は、魚が好き。
・・・そしてわしは、魚が食べたい。
よしよし、こいつは行けるぞ」
名案を思いついた四朗は空の皿を一枚用意すると、近所に住んでいる野良猫を一匹連れて来ました。
そして金持ちのだんなが四朗の家の前を通りかかったのを見計らって、四郎は連れて来た野良猫を大声で叱り始めたのです。
「この猫め!
よくも大切な魚を盗みよって!
お前の様な泥棒猫は、こうしてくれるわ!
えい! えい! えい!」
その声にびっくりした金持ちのだんなは、あわてて四郎の家の戸を叩きました。
「四郎どん、どうしたんじゃ! 猫が、猫が何かしたんか?!」
すると四郎は、金持ちのだんなに空の皿と猫を見せて、
「どうしたもこうしたも、こん猫が、わしの大切な魚を食うたんだ!
せっかくの朝ごはんのおかずが!
泥棒猫め、こうしてくれるわ!」
と、四郎がまっ赤な顔で猫を殴りつけようとするので、猫が可哀想になった金持ちのだんなは大慌てで四朗を止めると、
「待て待て、そんなに猫を叱っては可哀想じゃ。
取られたのは、魚だな。
よし、すぐに戻って来るから、ちょっと待っておれよ」
と、さっそく市場まで魚を買いに行って、その魚を四郎の空の皿にのせてやりました。
「四郎どん。どうか、これで猫を許してやってくれ」
それを聞いた四郎は、
「うーん。まあ、だんながそう言うのなら」
と、猫を逃がしてやりました。
さて、それから家に戻った四郎は家の裏口からさっきの猫を呼び入れると、だんなからもらった魚を半分に切って猫に渡しました。
「よしよし、お前のおかげでおかずが手に入ったわい。これは礼じゃよ」
おしまい
|
|
|