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第 334話
ヘビの知恵
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むかしむかし、福井県小浜市の空印寺(くういんじ)というお寺の軒にスズメの親子が巣を作りました。
そのスズメの巣に向かって、近くの五葉松(ごようまつ)が枝を伸ばしています。
ある夏の事、一匹のヘビが五葉松に登り、スズメの巣に伸びる枝を伝ってスズメの巣へと、かま首をのばしました。
「チュンチュン! チュンチュンチュンチュン!!」
おどろいた親スズメが、力一杯鳴き騒ぎました。
親スズメは飛んで逃げる事が出来ますが、子スズメはまだ飛ぶことが出来ません。
「チュンチュン! チュンチュンチュンチュン!!」
親スズメは鳴き騒いでヘビを追い返そうとしますが、ヘビはスズメの鳴き声など気にせず、そのまま近づいてきます。
「何事じゃ?」
外があんまり騒がしいので窓から顔を出した和尚さんと小僧は、ヘビがスズメの巣を狙っている事に気づきました。
でもよく見ると、ヘビのかま首はあともう少しの所で巣には届かないようです。
やがてヘビはあきらめたのか、するすると木からおりていきました。
「和尚さま、これなら大丈夫ですね」
小僧がそう言いましたが、和尚さんは首を振って言いました。
「いいや、ヘビは生き物の中でもっとも執念深いという。まだ分からぬぞ」
「そうですか」
和尚さんと小僧がしばらく様子をうかがっていると、やがてさっきのヘビが仲間を一匹連れてもどってきました。
そして二匹のヘビは一緒に五葉松を登ると、先ほどのヘビが同じように枝にからみついてかま首を巣の方へ伸ばし、もう一匹のヘビが仲間の体に自分の体をまきつけて、さらにかま首を伸ばしたのです。
これでヘビのかま首は、もうスズメの巣に届きます。
「チュンチュン! チュンチュンチュンチュン!!」
親スズメは小スズメを守る様に羽を広げて泣き叫びますが、泣き叫ぶだけではヘビを追い返すことは出来ません。
「これは大変」
和尚さんは長い竹竿で二匹のヘビをたたき落とすと、用心の為に五葉松の枝を切り落としました。
「チュンチュン、チュンチュン」
和尚さんに助けられたスズメの親子は、和尚さんにお礼を言うかの様に何度も頭を下げながら可愛く鳴きました。
やがて小スズメは成長し、親スズメと一緒に飛び立ったという事です。
おしまい
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