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第75話

ふしぎなたいこ

ふしぎなたいこ
ロシアの昔話 → ロシアの国情報

 むかしむかし、エメリヤンという若者が、お百姓(ひゃくしょう)さんの家にやとわれてはたらいていました。
 ある日、草原を歩いていると、カエルがピョンと飛びだしたので、ふみそうになりました。
 でも、うまくまたいでとおりました。
 するとうしろで、だれかがエメリヤンをよびました。
 見ると、美しい娘さんです。
「エメリヤン。わたしをお嫁にもらってちょうだいな」
 エメリヤンは娘さんが気にいったので、お嫁にもらいました。
 ある日、エメリヤンの家の前を、王さまが通りました。
 王さまは、エメリヤンとお嫁さんが仲よくしているのを見ると、いじわるをして困らせてやろうと思いました。
 そこで王さまは、エメリヤンをお城によんで、二人分の仕事をさせました。
 ところがエメリヤンは、夕方までに仕事をすませて、歌をうたいながら家へ帰りました。
 つぎの日は三人分、そのつぎの日は五人分と、どんなにたくさん仕事をさせても、エメリヤンはちゃんと仕事をしてしまいます。
「ではあすは、お城のまわりに川をつくって、その川に舟をうかべるのだ。できなかったら、おまえの首を切ってしまうぞ!」
 王さまは、一人ではぜったいにできないことをいいつけました。
「王さまは、わたしをいじめ殺すつもりなんだ」
と、エメリヤンはお嫁さんにいいました。
「まあ、心配しないで、早くおやすみなさい」
 つぎの朝、起きてみると、だれがつくったのか、お城のまわりに大きな川ができています。
 りっぱな舟も浮かんでいます。
 あとは、舟つき場の上を、たいらにならせばよいだけでした。
 王さまはそれを見ると、くやしがって、むちゃくちゃなことをいいつけました。
「こんどは、どこかわからない所へ行って、なにかわからないものを持ってこい!」
 エメリヤンは困って、またお嫁さんにそうだんしました。
 すると、お嫁さんはいいました。
「わたしのおばあさんの所へ行って、教えてもらいなさい」
 エメリヤンはいわれたとおり、森の中に住んでいる、おばあさんの家へ行きました。
 おばあさんは、
「この糸巻のころがるほうへ行って、たいこをさがしだして、お城へ持って行きなさい」
と、教えてくれました。
 エメリヤンは、糸巻のころがるほうへついて行って、たいこを見つけました。
 それをお城へ持って行くと、王さまはそれを見もしないでいいました。
「それは、わたしのほしいものじゃない」
「そうですか。では、たたきこわしてしまいましょう」
 エメリヤンが力いっぱいたいこをたたくと、お城の兵隊がみんな、たいこのそばに集まってきました。
 たいこをたたきながら歩いていくと、兵隊もゾロゾロとついてきます。
 兵隊をとられてしまっては、たいへんです。
「おい、エメリヤン、やめてくれ。もうお前をいじめないから、ゆるしてくれ」
 王さまは大声でさけびましたが、エメリヤンはドンドンたいこをうちながら、川のそばまできました。
 そして、たいこをコナゴナにこわして、川の中へほうりこみました。
 すると兵隊は、バラバラに逃げてしまいました。
 それから王さまは、もうむりをいわなくなったので、エメリヤンとお嫁さんは、しあわせにくらしたということです。

おしまい

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