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      第100話 
         
          
         
四人の子ども 
アルゼンチンの昔話 → アルゼンチンの国情報 
      
       むかしむかし、あるところに、四人の子どものお母さんがいました。 
 子どもたちはみんな、お母さんの言う事を聞かずに、けんかばかりしていました。 
 でも、一番下の息子のピカフロルだけは、お母さん想いの良い子でした。 
 
 ある日、お母さんは子どもたちに言いました。 
「お前たち。お母さんはすっかり年を取ってしまったよ。お前たちも、もう大きくなったのだから、自分たちで仕事を探してごらん。そうしたらお母さんも、安心して死ねるよ」 
 すると、一番上のコルコルが言いました。 
「ぼくは、山奥の森ヘ行くよ。そして昼間は眠って、夜になったら食べ物を探すのさ」 
 次に、二番目のレチューサが言いました。 
「わたしは、お墓のそばに住むわ。あそこはとても静かだし、お腹が空いたら、お墓に供えてある物を食べればいいもの」 
 次に、三番目のアラーニャが言いました。 
「わたしは、すてきな糸をおるのよ。はたを置くのは、暗くて涼しいどうくつがいいわ」 
 残るのは、四番目のピカフロルです。 
 お母さんは、ピカフロルに聞きました。 
「ピカフロルや。お前はどうするんだね?」 
 ピカフロルは、お母さんを真っ直ぐ見つめて言いました。 
「ぼくは、お母さんのそばにいます。お母さんのお世話をして、お母さんの為に働きます」 
 
 それから何ヶ月かたったある日、お母さんは重い病気にかかりました。 
 死ぬ時が近づいて来たのを知ったお母さんは、ピカフロルにお兄さんやお姉さんを探してくる様に言いました。 
 ピカフロルは、森に住むお兄さんを見つけて言いました。 
「お母さんがひどい病気です。早く帰ってあげてください」 
 けれどもコルコルは、大きなあくびをしながら答えました。 
「昼間っから、外ヘ出かけるなんてごめんだ。おれは眠たくてたまらないんだ」 
 次にピカフロルは、お墓のそばに住むレチューサのところへ行きました。 
「あら、わたしはこれから髪の毛の手入れをするところよ。外に出るなんていやよ」 
 レチューサはこう言って、断りました。 
 次にピカフロルが三番目のアラーニャを訪ねると、アラーニャは忙しそうにはたを動かしていました。 
「今日、はたをおり始めたところなのよ。途中で止めるなんて出来ないわ」 
 ピカフロルは家へ帰って、お母さんに、みんなが来られない理由を話しました。 
 病気のお母さんは、子どもたちの冷たい心に涙を流すと、悲しそうにこう言いました。 
「わたしの四人の子どもたちは、わたしが死んだら神さまにそれぞれにふさわしい罰(ばつ)やおめぐみを受けるでしょう。 
 昼間姿を見せずに森で暮らすコルコルは、これからも深い森の暗闇で暮らし、人々から隠れて暮らすでしょう。 
 自分の美しさばかり気にするレチューサは、反対にだんだんみにくくなり、レチューサが口を開けば人々は震え上がるでしょう。 
 はたおりが何よりも大事なアラーニャは、これからも一生はたをおって暮らすでしょう。 
 でもアラーニャの糸は、誰にも喜ばれる事はありません。 
 そして心優しいピカフロルは、姿形も美しくなって、誰もが見とれる事でしょう」 
 そしてお母さんが死ぬと、神さまたちは四人の子どもたちを鳥や虫に変えてしまいました。 
 コルコルは、大きなミミズクにされました。 
 そして人々から逃げるように、森の暗闇に隠れて暮らしました。 
 レチューサは、みにくいフクロウになりました。 
 ちょっとでもレチューサの姿を見かけたり声を聞いたりすると、人々は青くなりました。 
 アラーニャは、糸をおり続けました。 
 でもアラーニャの糸はクモの糸だったので、誰にも喜ばれませんでした。 
 そしてピカフロルは、赤いのどをしたハチドリになりました。 
 ユリやフウリンソウの上を飛び回って、甘いミツを吸う姿はとても美しく、人々にとても好かれました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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