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第103話

銅の国、銀の国、金の国

銅の国、銀の国、金の国
ロシアの昔話 → ロシアの国情報

 むかしむかし、あるところに王さまがいました。
 王さまは、お后のナスターシャと、三人の王子と一緒に暮らしていました。

 ある時、お后がお供を連れて庭(にわ)を散歩していると、突然、つむじ風が巻き起こってお后をさらっていってしまいました。
 それを聞いた王さまは、夜も眠れないほど悲しみました。
 やがて王子たちが大きくなると、王さまは王子たちに言いました。
「お前たちの中で、誰かお母さんを探しに行く者はいないか?」
「では、ぼくたちが行きましょう」
 そう言って、一番上のピョートル王子と、二番目のワシーリー王子が旅に出かけました。
 でも、二人の王子は帰ってこず、それから一年たち、二年たち、とうとう三年が過ぎました。
 すると末の弟のイワン王子が、王さまに頼みました。
「お父さん。どうかぼくに、お母さんとお兄さんたちを探しに行かせてください」
「いや、それはだめだ。たった一人残ったお前に何かあったらどうする」
 王さまは反対しましたが、でもイワン王子がどうしても行きたいと言うので、仕方なく許しました。

 馬に乗って旅に出たイワン王子は、何日も旅を続けてガラスの山のふもとにつきました。
 山のふもとには二つのテントがあって、そこにピョートル王子とワシーリー王子がいました。
「イワン、こんなところに何しに来たんだ?」
「お母さんと、お兄さんたちを探しに来たんですよ。それで、お母さんはどこにいるのですか?」
「お母さんは、この山の向こうにいるらしい。だが、どうしてもこのガラスの山が登れないんだ」
「そうですか。ぼくもやってみましょう」
 イワン王子は、ガラスの山を登り始めました。
 ガラスの山はとても急で、少し登ってもすぐに転げ落ちてしまいます。
 それでもイワン王子は、頑張ってガラスの山を登り続けました。
 イワン王子の手足は傷で血だらけになりましたが、それでも三日後、何とか山を登り切りました。
 イワン王子は、山の上から兄さんたちに叫びました。
「ぼくはこのまま、お母さんを探しに行きますから、そこで待っていてください。
 そして三年と三ヶ月たっても帰らなかったら、もう死んだものと思ってください」
 イワン王子が旅を続けると、やがて銅(どう)で出来たご殿が見えてきました。
 ご殿の門には銅のクサリにつながれた恐ろしいヘビが何匹もいて、口から火を吹いていました。
 そばに井戸(いど)があって、銅のひしゃくが銅のクサリでつるしてあります。
 ヘビたちは水を飲もうと首を伸ばすのですが、クサリが短くて届きません。
 そこでイワン王子はひしゃくで井戸の水をくんで、ヘビたちに飲ませてやりました。
 するとヘビたちはみんな大人しくなり、イワン王子が門を通るのを許してくれました。
 イワン王子が銅のご殿に入ると、中から銅の国の王女が出てきました。
「あなたは、どなたですか?」
「ぼくは、イワン王子です。
 つむじ風にさらわれた母を探しに来ました。
 母がどこにいるか、ごぞんじありませんか?」
「さあ、わたしは知りません。けれど、真ん中の姉が知っているかもしれません」
 そう言って銅の国の王女は、イワン王子に銅のマリをくれました。
「このマリを転がせば、道案内をしてくれるでしょう。
 つむじ風をほろぼしたら、わたくしを助けてくださいね」
「いいですとも」
 イワン王子が銅のマリを転がすと、マリはコロコロ転がりながら王子を銀の国に連れて行ってくれました。
 銀の国の銀のご殿の門には、恐ろしいヘビたちが銀のクサリでつながれていて、口から火を吹いています。
 そのそばに、銀のひしゃくをつるした井戸がありました。
 イワン王子が水をくんでヘビたちに飲ませてやると、ヘビたちは大人しくなってイワン王子を通してくれました。
 銀のご殿の中に入ると、中から銀の国の王女が走り出て来ました。
「わたしは恐ろしいつむじ風にさらわれて、もう三年になります。
 ここでロシアの方に会えるなんて、夢みたいですわ。
 あなたは一体、どなたですか?」
「ぼくはイワン王子です。
 つむじ風にさらわれた母を、探しに来ました。
 どこにいるか、ご存知ありませんか?」
「いいえ、わたしは知りません。
 けれども、一番上の姉ならお教え出来るでしょう。
 この銀のマリを差し上げますから、転がしてついていらっしゃい。
 つむじ風をほろぼしたら、わたくしを助けてくださいね」
「いいですとも」
 イワン王子は銀のマリを転がして、その後ろをついて行きました。

 しばらく行くと、金のご殿がキラキラと光っていました。
 門には、数え切れないほどたくさんのヘビが金のクサリにつながれて、口から火を吹いています。
 そばの井戸には、金のひしゃくが金のクサリでつるしてありました。
 イワン王子は金のひしゃくに水をくんで、ヘビたちに飲ませました。
 するとヘビはみんな大人しくなって、イワン王子を通してくれました。
 ご殿の中に入ると、中から金の国の王女のエレーナ姫が出て来ました。
 エレーナ姫は、イワン王子が出会った中で一番美しい女の人です。
「あなたは、どなたですか?」
「ぼくはイワン王子です。
 つむじ風にさらわれた母を探し来ました。
 どこにいるか、ご存知ありませんか?」
「知っています。
 ここから、それほど遠くはありません。
 金のマリを差し上げますから、転がしてついていらっしゃい。
 王子さま、つむじ風にお勝ちになったら、わたくしを救ってくださいね」
「いいですとも」
 イワン王子が金のマリについていくと、今まで見た事も聞いた事もないほど美しいご殿の前にきました。
 ご殿には光り輝く宝石が、一面にちりばめられています。
 門には頭が六つあるヘビがうようよといて、口から火を吹いています。
 イワン王子はヘビたちに水を飲ませて、ご殿の中に入りました。
 いくつも部屋を通り抜けて一番奥の部屋へ入ると、お母さんのナスターシャがかんむりをかぶって高いところに座っていました。
 お母さんは、入って来たイワン王子を見て驚きました。
「イワン。なぜここにいるの?」
「お母さん、あなたを取り戻しに来たのです」
「ありがとう。
 でも、つむじ風は恐ろしい力持ちだから、勝つのは難しいでしょう。
 でもお母さんが、お前の力を増やしてあげましょう」
 お母さんは、イワン王子を秘密の地下室へ連れて行きました。
 地下室には、右と左に水おけがありました。
「イワンや、右側の水をお飲みなさい」
 イワン王子は、右側の水を一口飲みました。
「イワンや、どんな気持です? 力は増えましたか?」
「はい、お母さん。このご殿なんか、片手でひっくり返せますよ」
「そうですか。でもつむじ風はもっと力持ちです。もう一口お飲みなさい」
 イワン王子は、また一口飲みました。
「今度はどうですか?」
「これはすごい。世界だって、ひっくり返せますよ!」
「それで大丈夫です。
 さあ、今度はこの二つのおけを取り替えておきなさい。右のを左に。左のを右に」
 イワン王子は、右のおけと左のおけを入れ替えました。
 イワン王子が飲んだのは力を増やす水で、左側にあったのが力をなくす水でした。
 地下室から戻ると、お母さんはイワン王子に言いました。
「もうすぐ、つむじ風が帰って来ます。
 そうしたら、すぐにつむじ風のこん棒をつかみなさい。
 どんな事があっても、離してはいけませんよ」
 お母さんがそう言っているうちに、外が真っ暗になって地響きがおこりました。
 つむじ風が、帰って来たのです。
 つむじ風が部屋に入ってくるとイワン王子は飛びかかって、つむじ風の持っているこん棒をつかみました。
 つむじ風は外ヘ飛び出すと、空高く舞い上がりました。
 つむじ風はものすごい勢いで飛び回りましたが、イワン王子はこん棒を離しません。
 さすがにつむじ風も疲れてきたのか、つむじ風は水を飲みに地下室に入りました。
 そして何も気がつかずに、右側のおけの水をガブガブと飲んだのです。
 そのすきに、イワン王子は左側の水を飲みました。
 ひと口飲むごとに、つむじ風の力は弱くなっていきました。
 そしてイワン王子はひと口飲むごとに、力が強くなっていきました。
 おかげでイワン王子は、簡単につむじ風を倒す事が出来ました。
 こうしてお母さんを救い出したイワン王子は、帰りの旅に出発しました。
 まず、金の国のエレーナ王女のところへ行きました。
 エレーナ王女は金のタマゴを転がして、金の国をそっくり金のタマゴの中にしまってイワン王子に送りました。
 そして二人は、結婚の約束をしました。
 それからイワン王子は、銀の国と銅の国の王女も助け出しました。
 イワン王子はガラスの山のいただきにつくと、長いひもをたらしてお母さんをふもとまで降ろしました。

 さて、山のふもとで待っていたピョートル王子とワシーリー王子は、お母さんがひもを伝って降りて来るのを見ると涙を流して喜びました。
 けれども、そのあとから三人の王女が降りて来るのを見ると、イワン王子が憎らしくなりました。
「弟に大きな顔をされるなんて、くやしいじゃないか。
 ここはぼくたちの手で、お母さんと王女たちを救い出した事にしよう」
 そう言って兄さんたちは山の上からたれているひもを奪い取ると、イワン王子が降りられなくしてしまいました。
 イワン王子は、一人で山の上へ取り残されました。
 イワン王子は、悲しくなって泣きました。
 そして泣きながら、つむじ風のこん棒を放り投げると、こん棒から突然、片目の男と足の悪い男が飛び出してきたのです。
 二人の男は、イワンに言いました。
「イワン王子さま、ご用ですか? どんな願いでも、三つだけかなえてあげましょう」
「では、食べる物が欲しい」
 イワン王子がそう言うと、たちまち食べきれないほどのごちそうが出て来ました。
 イワン王子は、それをお腹一杯に食べると言いました。
「次は、ゆっくり休みたい」
 するとたちまち、フカフカのベットが出て来ました。
 イワン王子はそのベットで、グッスリと眠りました。
 あくる朝、イワン王子はまたこん棒を放り投げました。
 すると、片目の男が飛び出して言いました。
「最後の願いは、何ですか?」
「ぼくの国へ帰りたい」
 そう言ったとたん、イワン王子はもう自分の国の市場(いちば)の真ん中に立っていました。
 イワン王子は、町のクツ屋に行って働きたいと言いました。
「それではどのくらいの腕前か、試しにぬってごらん」
 クツ屋の主人はそう言って、イワン王子に革を渡しました。
 夜中になると、イワン王子は金のタマゴを転がして金のご殿を出しました。
 そして中からエレーナ姫の金のクツを取って来ると、またご殿をタマゴの中へしまいました。

 次の日、金のクツを見たクツ屋はビックリして、王さまのご殿へ持って行きました。
 その頃、ご殿では三つの結婚式の用意をしていました。
 ピョートル王子とエレーナ姫、ワシーリー王子と銀の国の王女、銅の国の王女と将軍(しょうぐん)が結婚式をあげる事になったのです。
 クツ屋の持って来た金のクツを見ると、エレーナ姫はイワン王子が無事でいる事を知って喜びました。
 エレーナ姫は、王さまに言いました。
「この金のクツを作ったクツ屋に、わたくしにピッタリあった金の婚礼衣装(こんれいいしょう)を作らせてください。
 それが出来なければ、ピョートル王子と結婚しません」
 王女の命令を聞いたクツ屋は、ためいきをついて帰って来ました。
 それを聞いたイワン王子は、簡単に言いました。
「それぐらい、お安いことです。どうぞ、先に寝ていてください」
 夜中になると、イワン王子は金のタマゴから金のご殿を出して、金のご殿から金の婚礼衣装を持ってきました。
 あくる朝、クツ屋はキラキラと光り輝く金の衣装を見て喜びました。
 クツ屋の持って来た衣装を見たエレーナ姫は、クツ屋に言いつけました。
「明日の夜明けまでに、海の上に金の国を作り金のご殿を建てなさい。
 珍しい木がしげり、小鳥たちがわたしをほめたたえる歌を歌う様にしなさい。
 それが出来なければ、お前の命はありません」
 クツ屋から話を聞いたイワン王子は、笑って言いました。
「それぐらい、お安いことです。どうぞ、先に寝ていてください」
 夜中になると、イワン王子は海岸へ行って金のタマゴを転がしました。
 すると金の国が現れて、真ん中に金のご殿が建ちました。
 ご殿から海岸に、金の橋がかけられました。
 まわりには珍しい木がしげり、小鳥が美しい声でさえずり始めました。

 あくる朝、エレーナ姫は金のご殿を見ると、王さまに言いました。
馬車(ばしゃ)を用意してください。あのご殿で結婚式をあげましょう」
 さっそくみんなは馬車に乗って、金のご殿ヘ行きました。
 すると金の橋の真ん中に、イワン王子が立っていました。
 エレーナ姫は、大声で叫びました。
「みなさん、わたくしたちを救ってくださったのは、ピョートル王子ではありません。
 あの橋の上にいらっしゃる、イワン王子です!」
 そしてイワン王子と手を取り合って、金のご殿ヘ入りました。
 本当の事を知った王さまは、うそつきのピョートル王子とワシーリー王子を国から追い出そうとしました。
 けれども心のやさしいイワン王子は、兄さんたちを許してやりました。
 そしてピョートル王子は銀の国の王女と、ワシーリー王子は銅の国の王女と結婚する事になり、三つの結婚式を世界中の人たちがお祝いしたのです。

おしまい

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