1月16日 禁酒の日
1920(大正9)年、アメリカで禁酒法が実施された日です。
プロテスタントの影響が強かったアメリカではこれまでに18の州で禁酒法が実施されていましたが、この日からアメリカ全土に施行されました。
ところが、健康へ悪影響を及ぼす密造酒の横行や、ギャング出現の引き金にもなりました。
むかし、あるところに、むすめがひとりある夫婦がすんでいました。
そして、むすめが結婚する日がきました。
結婚式の日には、しんせきや知りあいの人たちを、おおぜいまねきました。
さて、教会での結婚式も無事にすみ、こんどはむすめの自宅で、はなやかなお祝いのパーティーをひらくことになりました。
ごちそうが山のようにテーブルにならべられましたが、まだ、ぶどう酒が出ていません。
そこで父親が、むすめの花よめに、いいました。
「ぶどう酒がなくちゃ、どうにもならん。地下の酒ぐらにいって、もっておいで」
「はーい」
花よめは、酒ぐらにおりていきました。
そして、ぶどう酒のビンをタルの下にあてて、せんをぬいて、ぶどう酒がビンにいっぱいになるのをまっていました。
花よめは、そのあいだボンヤリと、かんがえごとをはじめました。
「わたしは、とうとう結婚したんだわ。これから九か月もすると、むすこが生まれるわ。名まえは、なんとつけようかしら? ・・・そう、チッコ・ペトリロにしましょう。服をきせ、くつ下をはかせ、かわいがって育てて。・・・でも、もし、かわいいチッコが死んだりしたら、どうしましょう。・・・ああ、かわいそうな子、どうして死んでしまったの」
花よめは、ワーッと、なきだしました。
タルのせんは、あけっぱなしでしたから、ぶどう酒は、ザアーザアーと、床にながれっぱなしです。
テーブルについていたお客たちは、いつお酒がくるのかと、まっていました。
でも、いつまでたっても、花よめはもどってきません。
「ちょっと、酒ぐらへいって見ておいで」
と、父親が、おくさんにいいました。
「そうですね。ひょっとしたら、あの子は、ねむってしまったのかもしれませんね。小さいときから酒ぐらで、よくひるねをする子だったから」
母親が、酒ぐらにおりていくと、むすめがオイオイと、ないています。
「まあっ! どうしたの? なにがおきたの?」
「ああ、おかあさん。きょう、わたしは結婚したでしょう。そうすれば、九か月あとには、むすこが生まれるわ。その子の名まえは、チッコ・ぺトリロにしようと思うの。だけどね、おかあさん。もし、チッコが死んだらと思うと、かなしくて、かなしくて」
むすめは、またも、ワーッと、なきだしました。
「ああ、かわいそうな、わたしの孫」
「ああ、かわいそうな、わたしのむすこ」
むすめとおかあさんは、だきあって、なきだしました。
テーブルについていた人たちは、いくらまっても、ぶどう酒が出ないので、イライラしてきました。
「ふたりとも、なにをしているんだ。わしが見にいって、どやしつけてやろう」
父親は、酒ぐらにおりていきました。
すると、妻とむすめは、足までぶどう酒につかりながら、だきあって、ないています。
「おい。なにがおきたんだ?」
「おとうさん、きいてください。この子は、きょう結婚したでしょう。すると、まもなく、むすこが生まれますね。そこで、わたしたち、チッコ・ペトリロって名まえをつけることにしたんです。でも、そのかわいいチッコが死んだらと思うと、かなしくて、かなしくて・・・」
「うん。もっともだ、もっともだ。かわいそうなチッコ・ペトリロ」
父親も、なきだしてしまいました。
三人が、なかなかもどってこないので、
「ぼくが、見にいってきましょう」
花むこは、そういって、酒ぐらに、おりていきました。
すると三人は、足までぶどう酒につかりながら、ないています。
「いったい、どうなさったんです!」
「あなた」
と、花よめが、いいました。
「わたしたち、結婚したんですから、むすこができるわね。わたしは、その子に、チッコ・ペトリロと、名まえをつけることにしたんです。でも、せっかく育ったチッコが、もしも死んだらと思うと、かなしくて、かなしくて。それで、ないているんです」
「はあ? ・・・」
花むこは、さいしょ、じょうだんをいっているのだと思いました。
ところが、本気でいっているのがわかりましたので、三人にどなりました。
「あなたたち三人は、そろいもそろって、なんてばか者なんだ。みんな、お酒が出るのを、まっているじゃないか。いままで、こんなばか者ぞろいとは、思ってもみなかった。ばかばかしくて、気がおかしくなる。こんなうちでは、とてもくらせない。そうだ、いっそ旅にでよう。妻よ。おまえの顔を見ずにいたら、ぼくの気も、しずまるにちがいない。旅にでて、もし世間に、おまえより、もっとばかな者がいたら、もどってきて、いっしょにくらしてやる」
花むこは、さんざんののしって、酒ぐらを出ていきました。
そして、ふりかえりもせずに、旅にでていきました。
旅にでた花むこは、ある川のたもとにつきました。
すると、小舟につんだ、はしばみの実を、大きな熊手ですくいあげている人がいました。
でも、はしばみの実は、熊手のすき間からこぼれ落ちて、なかなかすくえません。
「もしもし。熊手で、なにをしているのですか?」
「ああ、さっきから、何度もすくっているだが、ちっとも、すくいあげられないんだ」
「あたりまえですよ。なぜ、シャベルをつかわないんです?」
「シャベル? そうか、なるほどね。そいつは、気がつかなかった」
(妻たちよりも、おばかな人が、一人いた)
しばらくいくと、川の水を小さなスプーンですくって、ウシにのませている人がいました。
「もしもし。そんな小さなスプーンで、なにをしているのですか?」
「ああ、さっきから、三時間もやっているんだが、ウシののどのかわきが、なかなかとまらねえんだ」
「あたりまえですよ。なぜ、ウシにちょくせつ、川の水をのませてやらないんです?」
「ちょくせつ? おおっ、それはいい考えだ」
(これで、おばかが、二人めだ)
花むこは、また、あるきつづけました。
すると、畑のくわの木のいただきに、ズボンを手にして、立っている女の人がいました。
「もしもし。そんなところで、なにをしているんです?」
「まあ、だんな、きいてくださいよ。夫が、このあいだ死んのですが、坊さんがいうにゃ、夫は天国へいったちゅうことです。そこで、わたしゃ、もどってきたら、このズボンをはかそうと思って、まってるだよ」
(三人めのおばかだ)
世間には、妻よりもばかな者が、三人もいた。
これでは、うちへかえったほうがよさそうだ。
花むこは、そう思って、うちへかえりました。
この後、うまれた子どもに、チッコ・ペトリコと名づけましたが、チッコ・ペトリコは、とても長生きしたそうです。
おしまい
他の記念日
籔入り
昔、商店に奉公している人や、嫁入りした娘が、休みをもらって親元に帰ることができた日。
この日と7月16日だけ実家に帰ることが許されていました。
初閻魔,閻魔賽日,十王詣
正月16日と7月16日の閻魔賽日(地獄の釜の蓋が開いて鬼も亡者も休むとされる日)に、寺院で十王図や地獄相変図を拝んだり、閻魔堂に参詣したりすること。
十王とは地獄にいて亡くなった人の罪を裁く10人の判官のことで、特に閻魔王のことを指します。
念仏の口開け
年が明けて初めて、仏様を祀って念仏をする日。
正月の神様(年神様)が念仏が嫌いであるということから、12月16日の「念仏の口止め」からこの日までの正月の間は念仏は唱えないこととされています。
晴れの特異日
晴れる確率の高い日。
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