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2月2日の日本の昔話
  
  
  
  おだんごコロコロ
 むかしむかし、おだんごをつくるのが、とても上手なおばあさんがいました。
   ある日のこと、おばあさんがおだんごをつくっていると、そのうちの一つが、コロコロコロと、ころがり落ちて、外へ行ってしまいました。
  「これこれ、おだんごよ、待ってくれ」
   おだんごは、コロコロコロコロころがって、道ばたの穴にストンと落ちました。
   追っかけてきたおばあさんも、続いて穴の中にストンと落ちてしまいました。
   穴の中は広い原っぱで、石のおじぞう(→詳細)さまが、たいくつそうに立っています。
  「おじぞうさま、わたしのおだんごが、こなかったかの?」
  「きた、きた。わしの前を通って、向こうのほうへ、コロコロコロ」
  「ありがとよ」
   おばあさんが少しいくと、また、おじぞうさまが立っていました。
  「そのおだんごなら、向こうのほうへ、コロコロコロ」
   おばあさんは、教えられたとおりに行くと、またおじぞうさまです。
  「ああ、あのおだんごは食べたよ。とってもおいしかった。ごちそうさん」
  「おんやまあ。おじぞうさまが食ベたのなら、まんず、よかんべ」
   そのとき、ドスンドスンと、大きな足音が近づいてきました。
  「おばあさんや、たいへんじゃ! 鬼どもがくるぞ。はよう、わしの後ろに隠れるがいい」
  「ヘいへい、ありがとうさんで・・・」
   おばあさんは、おじぞうさまの後ろにかくれました。
   やがて、赤鬼と青鬼がやってきて、鼻をピクピク動かします。
  「ふんふん、くさいぞ、人間くさい。・・・そこにいるな!」
   おばあさんは、すぐにつかまってしまいました。
   おばあさんを屋敷へ連れて帰った鬼が、しゃもじを一つ渡していいます。
  「米粒を一つ、カマに入れて、水をいっぱいにしてたくんだ。煮えたら、このしゃもじでグルリとかき回す」
   いわれたとおりにすると、お米はムクムクとふえて、まっ白なごはんがカマいっぱいになりました。
  「あれまあ。なんてふしぎな、しゃもじじゃろう」
   おばあさんは毎日、せっせとごはんをたきました。
   でも、家に帰りたくてしかたがありません。
   そこである日、鬼どもが山ヘ遊びにいっているすきに、ふしぎなしゃもじを持って逃げ出しました。
   まもなく、おばあさんの行くてに、大きな川が現れました。
   けれども、つごうのいいことに、舟が一そうつないであります。
   おばあさんの乗った舟が、川のまん中あたりまでいったとき、鬼どもが岸まで追いかけてきました。
  「おいみんな、水を飲んで舟を止めよう」
   鬼どもは、岸にならんで川の水をガボガボと飲みはじめます。
   水はドンドン少なくなって、舟はとうとう動かなくなってしまいました。
  「困ったのう、どうすベえ。おお、そうじゃ」
   おばあさんは、しゃもじを取り出し、舟の中でひょっとこ踊りをしました。
  ♪あっそれ、よいよい、すっとんとん。
   その踊りがあまりにもおもしろいので、鬼どもは思わず、
  「ワッハッハッハッ・・・」
   とたんに、飲んだ水が口からふきだして、流れ出た水のいきおいで舟は向こう岸につきました。
   おばあさんは、おじぞうさまの原っぱを通って穴をよじ登り、どうにか家に帰ることができました。
   さて、家に帰ったおばあさんが、このしゃもじでお米の粉をこねてみると、粉はドンドンふえて、ビックリするくらい大きなおだんごができました。
   こうして、おだんごづくりの上手なおばあさんは、ふしぎなしゃもじで、いつまでもいつまでも、おだんごをつくったということです。
おしまい