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3月24日の日本の昔話
  
  
  
  だまされたどろぼう
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
  「今日も、ようはたらいてくたびれた。グッスリ休みましょう」
   ふたりが戸じまりをして、あかりを消すと、ぬき足、さし足、しのび足。
   どろぼうが入ってきました。
   ミシッ、ミシミシ。
   さいわい、おじいさんは耳がたっしゃです。
  (おや、どろぼうが入ってきよったわい。ようし、今夜はひとつ、どろぼうをだまくらかしてやろう)
   そうおもって、となりにねているおばあさんをおこしました。
  「ばあさん、ばあさん。ひとがねているときに、いっぺんねたら、もう朝までおきることのない、いいおまじないがあるだが、おまえ、しっとるか?」
  「おら、ねむたくてしかたねえ。おまじないなど、どうでもいいでねえか」
   もんくをいうおばあさんに、おじいさんはつづけて、
  「まあ、そういわずにきくもんだ。もしも、おらがよその家に、どろぼうに入ったとする」
  「じいさんに、どろぼうができるわけ、ありますまいがの」
  「たとえばのはなしだ。まず、もちつきのうすをさがして、さいふだの、タバコいれだの、持ち物をぜんぶ入れる」
  「はい、はい」
  「そうしておいて、うすに着物をぬいでかける。こうすれば、どんなことがあっても家のもんは目をさまさんから、ゆっくりと、どろぼう仕事ができるんじゃ。わかったら、お休み」
   おじいさんはそういって、グウグウと、いびきをかくまねをしていました。
   よろこんだのは、どろぼうです。
  「これは、いいことをきいたもんだ」
   手さぐりでうすをさがすと、さいふやタバコいれをうすに入れ、着物をぬいでかぶせました。
   これでみつかる心配はないと、どろぼうはおじいさんたちのざしきに、ズカズカ入りこんで、たんすのひきだしをらんぼうにあけました。
   そこで、おじいさんが、
  「どろぼうだー!」
   大ごえでさけんだものですから、どろぼうのおどろいたこと。
   あわてにあわてて、にもつをおいたまま、はだかで逃げ出していきました。
   おじいさんはあかりをつけて、おばあさんをおこしました。
「ほれ、みてみい、どろぼうが、さいふもタバコいれも、着物もおいていってくれたぞ」
おしまい