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4月9日の日本の昔話
  
  
  
  だんまりくらべ
 むかしむかしあるところに、おじいさんはおばあさんが住んでいました。
   ある日、近所の人がきていいました。
  「きのう、もちをついたでな、食べてもらおうとおもって、もってきただよ」
   白くてやわらかそうなおもちに、おじいさんとおばあさんは大よろこびです。
   おもちは七つあります。
   二人は1つずつ、おもちを食べました。
  「うまい、うまい」
  「ほんとうにおいしいですねえ」
   もう一つずつ、食べました。
  「こんなにやわらかくてうまいもちは、食べたことがない」
  「ほんとうに。でも、明日までおいておくと、かたくなりますねえ」
   そういうと、また1つずつおもちを食べました。
   これで、残るおもちは1つです。
   さあ、どうしましょうか。
  「よし、だんまりくらべをして勝った方が、残りのもちを食べることにしよう」
  「いいですねえ」
   だんまりくらべは、先にしゃべった方が負けです。
   なかの良いおじいさんとおばあさんですが、その夜はおしゃべりができません。
   つまらないので、二人とも、早めにねてしまいました。
   さて、その日の夜中、家にどろぼうが入ってきました。
   おじいさんもおばあさんもどろぼうに気づきましたが、だんまりくらべをしているので、口をきくわけにはいきません。
   どろぼうは、ぬすんだ物をせおって逃げようとしました。
   そのとき、お皿の上にあのおもちがおいてあるのを見つけました。
  「あっ、うまそうなもちがあるぞ。いただきまーす」
   どろぼうがおもちを食べようとした、そのとき、ついにおばあさんが大声でいいました。
  「こらっ、そのもちを食うな!」
   ビックリしたどろぼうは、ぬすんだ物を全部放り出して逃げていきました。
   すると、おじいさんはうれしそうに、
  「わーい。ばあさんがしゃべった。わしの勝ちじゃ。もちはわしが食べるぞ。もぐもぐ・・・」
  「あーあ、あのときわたしが声をださなけりゃ、そのもちはどろぼうに食べられてしまったのに」
   おばあさんは、うらめしそうにいいました。
おしまい