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4月16日の日本の昔話
  
  
  
  カエルになったぼたもち
 むかしむかし、お百姓(ひゃくしょう→詳細)さんたちの食べものは、とてもとてもまずしいものでした。
   白いごはんなどは、めったに食べられません。
   ある村に、あまり仲のよくない、嫁さんとばあさんがいました。
   二人は顔をあわせると、けんかばかりしています。
   朝おきたときも、
  「嫁のくせに、なんておきるのがおそいんじゃろう」
  「年よりは、用もないのに早おきして、こまったものじゃ」
   イモの入ったおかゆを食べるときでも、
  「わしのほうが、イモがすくねえ」
  「わしより多く食ったくせに、なにをいう」
  と、悪口のいいあいばかりです。
   そんなある日、いそがしかった田植えがようやくおわりました。
  「毎日毎日、イモがゆばかりじゃのう。たまには、うめえもんが食いてえのう」
   ばあさんがいうと、嫁さんも賛成しました。
  「田植えもおわったことだし、今日は、ぼたもちでもつくるべか」
  「なに〜っ、ぼ、た、も、ち、じゃと。それはいい。すぐつくるべえ」
   いつもは悪口をいうばあさんも、今日は大よろこびです。
  「ゆんべな、夢の中で、ぼたもちを見たんじゃよ。食おうとすると、どんどん消えていってしもうてな」
  「夢の中でまでぼたもちが出てくるとは、食いいじのはったばあさまじゃな。アハハハハハッ」
  「ところで、アズキはあるのけ?」
   ばあさんが心配そうにきくと、嫁さんは胸をドンとたたきます。
  「あるともさ。こんなときのために、ちゃんとしまっておいたんじゃよ」
   二人は仲よく、ぼたもちをつくりはじめました。
   まず、米をたきます。
   次に、アズキをにます。
   そして、米をつきます。
   最後に、もちをまるめて、あんこをつけます。
  「どうじゃ、味見をすべえか」
  「ばあさん、一人で味見をするのは、ずるいぞ」
  「じゃあ、二人でいっしょに味見をするかや?」
   めずらしく二人は、わらいあいながら、声をそろえていいました。
  「うめえ」
  「うめえ」
   二人は、むちゅうでぼたもちを食べ始めました。
  「ばあさん、いくつ食った?」
  「おらぁ五つ、いや三つじゃ。おめえはいくつじゃ?」
  「おらぁ、六つ。いや三つじゃ」
   二人は、また、パクパク食べ始めました。
  「ふわっ、もう食えねえ。おなかがわれそうだ」
   嫁さんは食べるだけ食べると、となりの部屋にいってしまいました。
   そこには、一つだけ、ぼたもちがのこってしまいました。
   ばあさんは、そのぼたもちをなべにかくしながら、ぼたもちにいいました。
  「ええか、ぼたもちよ。嫁の顔を見たら、カエルになるんだぞ」
   このようすを、嫁さんはしょうじのすきまから見ていたのです。
   嫁さんは、次の朝早くおきると、なべの中のぼたもちを食べてしまいました。
  「ああ、うまかった。さて、ぼたもちのかわりに、このカエルを入れておいてと」
   嫁さんは、なべの中にカエルを入れてしらんぷり。
   そうとは知らないばあさんは、嫁さんが田んぼにいったすきに、なべのふたをあけました。
   すると、ビョーン。
   飛び出したのはカエルです。
   ばあさんは、逃げ出すカエルをあわてておいかけます。
  「これ、待て、ぼたもち。わしじゃ、嫁じゃないぞ。待て、待て」
   ばあさんは、田んぼににげこんだカエルを見て、なきだしました。
「わ〜ん、おらのぼたもちが、およいでいってしもうただよ〜」
おしまい