
  福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 4月の日本昔話 > にせ本尊
4月19日の日本の昔話
  
  
  
  にせ本尊
 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん→詳細)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
   なかまの小僧と寺のそうじをしていると、近くの家のおかみさんがやってきて、
  「ぼたもちつくったから、食ベておくれ」
  と、言ってくれました。
  「こりゃ、うまそうだ」
   さっそくガブリとかぶりついたら、
   ガチッ!
   よくよく見たら、丸っこい石ころでした。
  「けけけ、おいらのぼたもちは、うまかったかあ?」
  「あっ! キツネにだまされたぞ。それ、つかまえろ!」
   みんなで追いかけましたが、どこへどう逃げたのやら、どこにもいません。
   そんなとき、本堂の方から和尚(おしょう→詳細)さんの大声がしました。
  「みんなきてくれ。大変だあ!」
   いってみてビックリ。
   お堂には一体の仏さましかないはずなのに、そっくり同じ仏さまが、二体ならんですわっているのです。
  「ははん、キツネが化けているな」
  と、気がついたけれど、どっちが本物で、どっちがにせ物か、さっぱり見分けがつきません。
   和尚さんがいいました。
  「しっぽはないか?」
  「ありません。和尚さん、こうなれば、棒で頭をたたきましょうか?」
  「いかん、本物をたたいたら大変じゃ」
   すると一休さんが、
  「見分けるのは簡単(かんたん)ですよ。本物の仏さまは、和尚さんがお経を読むと、いつも舌をペロリと出すではありませんか」
   そういって、和尚さんに目で合図を送りました。
  「おお、そうじゃった、そうじゃった。よく気が付いたな、一休。・・・では、さっそく始めよう」
   ポクポクポク、なむなむなむ。
   ポクポクポク、なむなむなむ。
  と、和尚さんがお経を読むと、一つの仏さまが長い舌をペロリと出しました。
  「それっ、舌をペロリと出したのがキツネだぞ!」
   キツネはあっというまにつかまり、柱にしばりつけられました。
   さすがのキツネも、コンコンと泣きだしました。
  「コンコン、かんにんしてくれ。コンコン」
  「もう、悪さをしないな!」
  「コンコン、もうしない。コン」
   キツネは、泣きながら山に帰っていきました。
おしまい