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5月14日の日本の昔話
  
  
  
  ゆうれいのでるやしき
 むかしむかし、あるところに、とても正直な夫婦がいました。
   でも、正直すぎて人にだまされてしまい、ひどい貧乏ぐらしです。
   ごはんもろくに食べないので、赤ん坊がうまれても、おかみさんのおっぱいがまんぞくにでません。
   そこで、
  「よそへいって、はたらこう」
  と、ある町の長者(ちょうじゃ→詳細)のやしきで、はたらかせてもらうことになりました。
   長者はまじめにはたらく二人に感心して、一軒(けん)のやしきをあたえました。
  「ふるいやしきだし、夜中(よなか)にゆうれいが出るとのうわさもあるが、ただであげるから、しんぼうしなさい」
  「はい、ありがとうございます」
   夫婦がそのやしきにすんでみると、なるほどたしかに、へんなことがつづきました。
   かぜもないのに、行灯(あんどん→詳細)の火がきえたり、戸がガタガタとなったり、てんじょうからは、きもちのわるいわらいごえがきこえてきたりするのです。
  「わしは、こんなやしきはごめんじゃ」
   だんなはおそろしくなって、もとの村へかえろうといいましたが、しっかりもののおかみさんはへいきです。
  「いくらあやしいことがあっても、わたしらには、なんのわざわいもないではありませんか。村へかえりたいなら、ひとりでかえりなさい。わたしは子どもと、ここにのこります」
   そしてほんとうに、あかんぼうとふたりで、このやしきにのこりました。
   すると、そのばんおそく、ゆかいたがギシギシとなったかとおもうと、目の前におじいさんとおばあさんのゆうれいがでてきて、
  「わしらは、このやしきの宝をまもる者じゃ。おまえは、しっかりもので度胸(どきょう)もある。まったくたいしたもんじゃ。このやしきの宝はおまえにやろう。これで、もう心残りはない。あすからはしずかになるから、あんしんしてくらせ」
  と、宝のありかを教えてくれました。
   おかみさんが次の朝、ゆうれいにおしえられたところをほってみると、なんと千両箱がいくつも出てきました。
   正直者のおかみさんは、そのことを長者に知らせて、出てきた千両箱をすべて差し出しましたが、長者はニッコリ笑って、
  「これは、まじめで正直なおまえにくださったものだ。わしはいらないから、おまえたち家族で使いなさい」
  と、言ってくれました。
  「はい、ありがとうございます」
   おかみさんは村に帰ってだんなを呼び戻すと、そのお金でしあわせに暮らしました。
おしまい