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7月22日の日本の昔話
  
  
  
  カッパの宝物
 むかしむかし、九州に九十九峠という峠があり、そこをくだったところに、カッパ(→詳細)池と呼ばれる深い池がありました。
   青黒い水をたたえた池は、見るからに気味悪く、この池で魚をとったり泳いだりすると、恐ろしいカッパが現れて、かならずいのちをうばうといいます。
   ある日の夕方、ひとりのお百姓(ひゃくしょう→詳細)が、この池のふちでウマを洗っていました。
   するととつぜん、ウマのたづなをグイグイ引っぱるものがあります。
   お百姓はあわててウマのしっぽをつかみ、うしろへ引っぱりました。
   ウマもおどろいて土手の上へかけあがると、なにかをふりおとしました。
   見てみると、なんと頭に皿をのせたカッパです。
  「このやろう!」
   お百姓はいきなりカッパにとびつきました。
   カッパは、あっというまにひっくり返り、頭の皿の水をすっかりこぼしてしまいました。
   皿の水がなくなっては、カッパは力が出ません。
   カッパは、たちまちお百姓に組みふせられ、首をしめられました。
  「く、苦しい・・・」
   カッパは、目を白黒させながらおがむように手を合わせます。
   お百姓が手をゆるめてやると、カッパは手をついてあやまりました。
  「もういたずらはしないからゆるしてくれ。そのかわり、わしの宝物をあげるから」
   宝物と聞いて、お百姓はニンマリです。
  「いったいどんな宝物をくれるというのだ」
   するとカッパは、いつのまに用意したのか、ひとつのタルと手紙をお百姓に渡して、
  「宝物はここにない。すまんがわしの家までとりに行ってくれ。わしの家は、この峠をのぼりきって右へ曲がったところにある。このタルと手紙を持っていけば、家の者が渡してくれるはずだ」
  「・・・・・・」
   お百姓は、なんだか怪しいような気もしましたが、
  (まあ、とにかく行くだけ行ってみよう)
  と、覚悟をきめ、タルをかついで峠をのぼっていきました。
   ところが、上へ近づくにつれて、なんだかくさいにおいがしてきます。
   おかしいと思ってあたりを調べてみましたが、べつに変わったようすもありません。
  「クンクン。・・・もしかして、このタルか?」
   なんと、くさいにおいは、かついでいるタルの中からもれていたのでした。
   お百姓は、あわててふところから手紙を出して読んでみました。
   すると手紙には、
  《親分のいいつけどおり、人間の肛門を百個とどけます。タルの中には九十九個入っていますが、あとの一個はこの男のものをとってください》
  と、書いてありました。
  「そ、そんなばかな・・・」
   お百姓は、ビックリしてタルを投げだすと、大あわてで峠(とうげ)をくだっていきました。
   男は家にもどったものの、高い熱を出して、それから七日間も寝こんでしまいました。
おしまい