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7月28日の日本の昔話

うば捨て山

うば捨て山

 むかしむかし、おじいさんやおばあさんを、まるで大事にしない国がありました。
 親が六十才になると、その子や孫は、うば捨て山に親を捨てにいかなければなりません。
 そうしないと、殿さまから、それはひどいめにあわされるのです。
 ある年のこと、ちょうど六十才になったおじいさんがおりました。
 息子や孫たちは、とてもつらい気持ちで、おじいさんをかごに入れ、しかたなく出かけていきました。
 うば捨て山は、昼でも暗い森の奥、道もないので、ちゃんと目印をつけていないと、ふもとには帰れません。
 おじいさんは、ときどきかごの中から手を出して、道の木の小枝をポキポキとおりました。
「おじいさん、こっそり村へ帰るつもりかな?」
 孫の男の子が、ボソッと、つぶやきました。
「おじいさん、ポキポキおった小枝をたよりに、また帰りなさるんか?」
 息子も心配顔で聞きました。
 もしそうだとすると、大変です。
 しかし、おじいさんは静かに首を振りました。
「そうじゃない、わしはもう、死ぬ覚悟はできとる。でもな、おまえたちこそ、もう一度村へ帰らねばなるまい。この道もない暗いやぶで迷わぬように、わしは、こうしているんだよ」
「・・・! おじいさん、ごめんなさい」
「かんにんしてくだされ!」
 孫の男の子も息子も、その場に、へたばるようにあやまりました。
「いいとも、いいとも、心配するな。それよりも日がくれる前に、早くうば捨て山にいこうじゃないか」
 おじいさんは、孫の頭をなでながらいいました。
「いいえ、だめです! 殿さまから、どんなにされてもかまわない。いっしょに村へもどってくだされ!」
 息子は泣きながら、キッパリといいました。
 こうして、息子たちはこっそり、おじいさんを連れもどして、家の奥にかくしておきました。
 ところがそのころ、隣の国から、この年寄りを大事にしない国に、なぞをかけてきました。
 初めに、どこから見ても、色も形もそっくり同じ二匹のヘビを持ってきました。
「さて、どちらがオスで、どちらがメスか、わかるかね?」
 みんな首をひねって、うなるばかりです。
「だれか、わかる者はいないか?」
 赤い顔をした役人が、大声でどなりちらしたとき、孫の男の子がチョコンと出てきていいました。
「そんなのわけないや、家のざしきにワタをしいて、はわせてみればいい。一匹はジッとしてる。もう一匹はノロノロはい出すさ。こっちがオスで、おとなしくしているのがメスに決まってる」
「うむ、そのとおり」
 隣の国の使いの者も、感心しました。
 でも男の子は、いつかおじいさんに聞いて、ヘビのことを知っていたのです。
 それから、つぎつぎと、むずかしいなぞが出されました。
 男の子はわからないと、そっと家に帰っては、おじいさんに答えを聞いて、みごとに答えました。
「むむむむっ、負けた、負けた。この国は、なんとりこう者のいるりっぱな国だろう」
 なぞをかけてきた国の使いは、こそこそと、帰っていきました。
 さて、むずかしいなぞをといたのは、ほんとうは、おじいさんだったということは、すぐに殿さまにもわかりました。
「いやはや、これまで悪いことをしてきたわい。もう二度と、年寄りをうば捨て山に捨ててはいかんぞ」
 さっそく、国じゅうに新しい命令が出されました。

おしまい

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