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8月7日の日本の昔話
  
  
  
  ガラクタおばけ
 むかしむかし、坊さんが、ひとりでたびをしていました。
   ある日の夕方。
  「どこか、とめてくれる家はないかな」
   あたりをみまわすと、やねのかたむいた、あれ寺が目にとまりました。
  「ボロボロじゃが、やねがあるだけ、ましじゃわい」
   坊さんは、あれ寺に入っていきました。
   いろりに火をたいて、あたっているうちに、坊さんはからたがあたたまって、つい、ウトウトしはじめ、やがてグッスリとねむってしまいました。
   すると、どのくらいたってからか、だれもいないはずのとなりのざしきのほうで、にぎやかなうたがはじまりました。
   坊さんがおきだして、しょうじの穴からのぞくと、こわれたからかさや、七輪(しちりん)や、かけたおさらや、そこのぬけたひしゃくや、茶がまたちが、うたいながらおどっていました。
   ガラクタのおばけです。
   坊さんはしずかに、おきょうをとなえました。
   すると、ガラクタおばけたちはしずかになって、やみのなかにきえていってしまいました。
   つぎの朝、坊さんがとなりのざしきをしらべてみると、おし入れのなかに、ゆうべのからかさや、七輪や、おさらや、ひしゃくや、茶がまなどが、らんぼうに、ほうりこまれていました。
  「よしよし、かわいそうに。わしがとむらってしんぜよう」
   坊さんは、おし入れにあった物たちを取り出して、一つ一つていねいにみがいてやると、ありがたいおきょうをあげて、ガラクタたちをなぐさめたということです。
   人に使われた物は、たましいがやどるといいます。
   手入れもせず、押し入れに入れたままにしていると、化けて出るかもしれませんよ。
おしまい