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8月28日の日本の昔話
  
  
  
  親指太郎
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
   ふたりはなに不自由ない暮らしをしていましたが、子どものいないのがさみしくてなりません。
   そこで観音様(かんのんさま→詳細)にお願いをすると、あらふしぎ、おばあさんの親指がみるみるふくらんできて、指の先からかわいらしい男の子が飛び出してきました。
   指から生まれただけに、指の大きさほどしかありません。
   おじいさんとおばあさんは、その子を「親指太郎」と名づけて、たいそうかわいがりました。
   ところがある日、急に大雨がふったので、ささ舟に乗って遊んでいた親指太郎は川の水に流されると、あれよあれよというまに、海まで運ばれてしまいました。
   そこへ大きなタイが現れて、親指太郎を一口で飲みこんでしまいました。
  「さて、どうしようか?」
   親指太郎が出る方法を考えていますと、運のよいことに、タイは漁師のアミにかかりました。
  「うまそうなタイだ。さっそく食おう」
   漁師はタイをまな板の上にのせると、包丁をふりあげました。
   タイといっしょに、切られてはたまりません。
   親指太郎がタイのおなかの中で、
  ♪ステテコテンで スッテンテン
  と、おどりだしますと、タイがまるで生きているようにはね回ります。
  「おや? こりゃ、中に何かがおるぞ」
   漁師が用心深くタイの腹をさばきますと、中から親指太郎が現れました。
   親指太郎は、これまでのできごとを漁師に話しますと、漁師はあわれに思って、おじいさんとおばあさんのもとへ、連れ戻してくれました。
   やがて親指太郎は、鬼退治をして宝物を手に入れ、おじいさんとおばあさんに孝行(こうこう)をしたということです。
おしまい