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10月3日の日本の昔話

正体のばれたキツネ

正体のばれたキツネ

 むかしむかし、ある山のとうげに、小さな茶店がありました。
 主人のおじいさんが店番をしていますと、ひとりのさむらいが入ってきました。
「ごめん」
「はい、いらっしゃいませ」
「じいさんや、ここのダンゴは、うまいというひょうばんだ。わしにもひとさらもってまいれ」
「はいはい。どうぞ、めしあがってくださいませ」
と、おじいさんはお茶とダンゴをはこんできました。
 そして、おきゃくを見ますと、まあたらしいはおりをきて、きちんとはかまをはいています。
 二本のかたなを腰にさした、りっぱなおさむらいでした。
 ところが、その顔を見たとき、
「あれ、まあ!」
と、おじいさんはビックリ。
 おさむらいの耳は、ピーンと、三角にとがっています。
 そして、顔のあちこちに白い毛がのこっていました。
(ははーん、このおさむらいはキツネだな)
と、おじいさんは思いました。
 だけど、キツネはうまくばけたつもりなのでしょう。
 むねをそらせて、いばったかっこうをしています。
 おかしくなったおじいさんは、小さなおけに水をいれて、おさむらいのまえへもっていきました。
「おさむらいさま、お顔がすこしよごれておいでのようです。どうぞ、この水をおつかいください」
「ふうむ、これはどうも」
と、うなずいたおさむらいは、おけの中をのぞいたとたんに、ビックリ。
 そこにうっっている顔は、はんぶんおさむらいの顔で、はんぶんキツネの顔でした。
「コンコン、これはばけそこなった」
と、キツネはあわてました。
「おさむらいさま、ごゆっくりめしあがってくださいませ」
と、おじいさんがいっても、もうふりむきもしません。
 ダンゴもたべずに、ピョーンととびあがったかと思うと、そのまま山のほうへにげていってしまいました。
 あくる日、おじいさんは、たきぎをひろいに山の中へ入っていきました。
 すると、どこからか、
「おじいさん、おじいさん」
と、よぶ声がします。
 おじいさんは見まわしましたが、まわりにはだれもいません。
「はい、はい、なんのご用ですか?」
と、おじいさんがいいますと、
「おじいさん、きのうはおかしかっただろう。大失敗だったよ。ウフフフ、アハハハ」
と、わらう声がきこえます。
「ああ、きのうのキツネさんか。そういえばあのときはおかしかったな、アハハハ」
と、おじいさんも大わらいしました。

おしまい

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