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10月15日の日本の昔話

ふるやのもり

ふるやのもり

 むかしむかし、雨のふるくらい晩、おじいさんが子どもたちに、話を聞かせていました。
「じいさま、いちばんこわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうがいちばんこわい」
 ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと、屋根裏にひそんでいました。
 どろぼうが、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれが、いちばんこわいと)
「じいさま、けものでいちばんこわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミ(→詳細)だの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」
 ウマを食べようと、ウマ小屋にひそんでいったオオカミは、それを聞いておどろきました。
 ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる、雨もりのことです。
 だけど、オオカミはそんなこととは知りません。
「おらよりこわい、ふるやのもりとは、いったいどんな化け物だ?」
と、ガタガタふるえだしました。
 屋根裏のどろぼうも、話を聞いてヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(ふるやのもり)が、首にポタリとおちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
 どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりが、きたあっ!」
 オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。
 振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうと、メチャクチャに走り続けます。
 夜明けごろ、うまいぐあいに、つき出ている木の枝を見つけたどろぼうは、ヤァー! と飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
 オオカミのほうは、背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
 話を聞いて、トラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前で、そんなことはいえません。
「ふるやのもりという化け物、必ず、わしが退治してやる。安心せい」
 トラとオオカミは、いっしょに、ふるやのもりをさがしに出かけました。
 すると、高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
 オオカミがそれを見て、ガクガクとふるえだしました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
 トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
 すると、どろぼうが二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
 トラとオオカミは、なさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
 どろぼうは、地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは、遠い山奥に逃げ、そしてトラは、海を渡って遠い国まで逃げて、二度と帰ってはきませんでした。

おしまい

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