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10月30日の日本の昔話
  
  
  
どうもと、こうも
 江戸に、「どうも」という、ゆうめいな医者と、「こうも」という、これも、ゆうめいな医者がすんでいました。
   二人とも、日本一の医者といわれていました。
  「わしは、日本一の医者じゃ」
  と、どうもが言います。
  「わしが、日本一の医者よ」
  と、こうもも言います。
   そこで二人は、どっちが本当の日本一か、うでくらべをすることにしました。
   まず、どうもが言いました。
  「切ったうでを、すぐにつなぐことができるか?」
  「そげんなことは、たやすいことよ」
  「そんなら、ついでみれ」
  と、どうもが自分のうでを、刀で切りおとしました。
   こうもは、たちまち、どうものうでをつなぎました。
   うでは元どおりで、ついだあともわからないくらい、上手につないでありました。
  「今度は、お前がつぐ番だ」
  と、言って、こうもが自分のうでを、刀で切りおとしました。
   どうもがこうものうでを、元どおりにつなぎました。
   これも、ついだあとがわからないくらい、上手につないでありました。
   どっちもみごとなうでまえで、これでは、どちらが日本一かわかりません。
   すると、
  「うでくらいついだとて、なんのじまんになろうかい。首のつぎくらべはどうじゃ?」
  「よかろう。たやすいことよ」
   今度は、こうもがどうもの首を切って、どうもをころしてしまいました。
   回りで見ていた人びとはビックリ。
   でも、こうもは、
  「おどろくことはないが」
  と、言うと、たちまちどうもの首をつないで、どうもを生きかえらせてしまいました。
  「みごと、みごと!」
   みんな、手をたたいてかんしんしました。
  「今度は、わしの番じゃ」
  と、どうもがこうもの首を切りました。
   そして、どうもはたちまちこうもの首を、元どおりにつないで生きかえらせました。
   どちらもたいしたうでまえで、これではなかなか勝負がつきません。
「かわりばんこに首をとっても、何もおもしろうない。今度は両方いっぺんに、首を切ってみてはどうじゃ? そして、はやく首をつないだ方が勝ちじゃ」
と、どうもが言うと、
「そりゃ、おもしろい」
 こうもも、さんせいしました。
「では、一、二、三! で、はじめるぞ」
「おおっ」
「それ、一、二、三!」
 二人はいっしょに、あい手の首を切りました。
 ところが、両方いっしょに首を切ってしまったので、首をつないで生きかえらせてくれる人がいません。
 どうもこうもすることができないで、二人は死んでしまいました。
 それから、「どうもこうもできない」という言葉が、できたということです。
おしまい