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12月14日の日本の昔話
  
  
  
  ネコとネズミ
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
   ある日のこと、おじいさんが山の畑で草むしりをしていると、草むらに一ぴきの子ネコを見つけました。
  「おおっ、かわいそうに。はらをすかせとるようじゃな。どれ、いっしょにうちに帰ろうな」
   山でひろった子ネコを、おじいさんとおばあさんは、まるで自分の子どものように、だいじにだいじにかわいがりました。
   ある日のこと、納屋(なや→ものおき)の中で、なにやらへんな音がするのに気がついたネコが、納屋へ入っていきました。
  ♪それやれ、みがけやみがけ、ネズミのおたから。
  ♪つゆのしっけをふきとばせ。
  ♪それやれ、みがけやみがけ、ネズミのおたから。
  ♪みがいてみがいて、ピッカピカ。
   納屋のゆかにある小さなあなから、ネズミたちの歌う声が聞こえてきます。
   つぎの日も、ネコは納屋に入ってみました。
   すると、キョロキョロまわりを見まわしているネズミを見つけました。
   ネズミは、ふくろからこぼれた豆をひろおうとしています。
   そのとたん、ネコはネズミにとびかかっていきました。
  「ひゃ〜っ!」
   おどろいたネズミは、いまにもなきそうな声でいいました。
  「おねがいです。どうかわたしを見のがしてください。わたしたちネズミは、ネズミのおたからをみがかなくてはなりません。これはたいへんなしごとなんです。つかれがたまったのか、お母さんが病気でたおれてしまったのです。それで、お母さんにえいようをつけさせようと、豆をさがしに出てきたところです。お母さんが元気になったら、わたしはあなたに食べられに出てきます。それまでどうか待ってください」
  「・・・・・・」 
   ネコはネズミをはなしてやりました。
  「ありがとうございます。やくそくはかならず守りますから」
   子ネズミがあなの中へ帰ってしばらくすると、ネズミたちの前に、豆がバラバラとおちてきました。
   おどろいて顔をあげてみると、なんとネコが、一つぶ一つぶ豆をあなから落としているのです。
   子ネズミは、豆をお母さんにわたすと、ネコの前に出ていいました。 
  「ネコさん、ありがとう。これでお母さんも元気になることでしょう。さあ、やくそくどおり、わたしを食べてください」
   しかしネコは、もっていたのこりの豆を子ネズミの前におくと、そのまま納屋から出ていきました。
  「ありがとう。ネコさん」
   ネズミの目から、なみだがポロリとこぼれました。
   それから何日かたった、ある日のこと。
   納屋のほうから、チャリン、チャリンという音がします。
   納屋の戸を開けたおじいさんとおばあさんは、目をまるくしました。
  「これは、どうしたことじゃ」
   ゆかのあなの中から、ドンドン、ドンドン、小判が出てくるのです。
   そして、小判のあとから子ネズミ、母ネズミ、そしてほかのネズミたちも出てきました。
   子ネズミが、小さなあたまをペコリと下げると、いいました。
  「おかげさまで、お母さんの病気もすっかりよくなりました。ほんとうにありがとうございました。それと、ネズミのおたからを、ぶじにみがき終えることができました。おれいに、すこしではございますが、この小判をお受けとりください」
  と、山のようにつみあげた小判を指さしました。
  「なんと、このおたからをわしらにくれるんじゃと」
   それは、おじいさんとおばあさんが二人でくらしていくには、じゅうぶんすぎるほどのおたからでした。
   こうして、おじいさんとおばあさんは、いつまでもなに不自由なく、元気にくらすことができました。
   もちろん、ネコといっしょに、ネズミたちもとてもかわいがったそうです。
おしまい