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12月24日の日本の昔話
  
  
  
  サルとヒキガエル
 むかしむかし、サルとヒキガエルが、山のなかであいました。
  「ヒキガエルさん、もうすぐ、おしょうがつだね。きみのところはおもちをついたの」
  「ううん、まだだよ。おもちはうまいね。たべたいね」
  「おもちのあるところなら、しっているよ。いっしょにいかないか?」
  「うん、いくいく」
   二匹は、山をおりました。
   村の庄屋(しょうや→詳細)さんのうちで、ペッタン、ペッタン、おもちをついていました。
  「あれをとろうよ。ヒキガエルさん。ぼくが庄屋さんのうちへ入ってまっているから、きみは、池へとびこむのだよ。ドブンとね。いいかい?」
  「いいよ、わかったよ」
   ヒキガエルは、池のほうへはっていきました。
   サルは、庄屋さんのうちへ入りました。
   ヒキガエルが、池へとびこみました。
   ドブン!
   大きな音がしました。
   おもちをついていた人たちが、
  「なんだなんだ」
  と、おもてへとびだしました。
   うちのなかは、からっぽになりました。
   サルが顔をつきだして、
  「しめしめ。おもちをもらっていくよ」
   臼(うす)のまま、うら口からかかえだしました。
   ヒキガエルは、池からにげだしました。
   うんこらさ、うんこらさ。
   サルは、うすを山の上まではこび、ひとやすみしていました。
   ノソリノソリと、ヒキガエルがやってきました。
  「ああこわかった。もうすこしで、つかまるところだったよ。ようやくここまでにげてきた」
  「ごくろうさま。うまくいったよ、このとおり」
   サルはうすをみせると、白いおもちが、ペッタリとはりついていました。
  「つきたてのおもちはうまそうだね。さあ、サルさん。二人でとったおもちだから、はんぶんずつわけようじゃないか」
   すると、サルは、くびをよこにふって、
  「そんなのおもしろくないよ。きみかぼくか、どっちか一人にきめようよ」
  「それなら、ぼくがもらうよ」
  「だめだめ。そんなのだめ」
   サルは、うすをひっこめました。
  「こうしよう、うすをここからつきおとそう。うすは、下までころがっていくよ。一、二の三ではしっていって、さきにそこまでいったものがかち。かったものが、ぜんぶたべるのさ」
  「そんなのやだ。ぼくは、ノソリノソリゆっくりだもの。サルさんにはかなわないよ。ねえ、そんなこといわないで、なかよくはんぶんずつわけてたべよう」
  「だめだめ。もうきまり。一、二の三」
   サルはいきなり、うすをつきとばしました。
   コロコロコロ。
   うすは、さかをころがっていきました。
   サルは、すばやくかけだしました。
   小さな木などはとびこえて、大きな木は、えだからえだへとびうつって、うすよりもさきに、ふもとへつきました。
  「さあこい!」
   りょう手をひろげて、うすのころげてくるのをまっていました。
   コロコロコロ。
  「いまだ!」
   サルは、うすにとびつきました。
  「ぼくのかち。おもちは、ぼくのものだ」
   こういいながら、うすのなかをのぞいてビックリ。
   うすはからっぽでした。
  「わかった、どこかへおちたんだ。ひろってこよう」
   サルは、山をのぼりました。
   とちゅうで、ヒキガエルにあいました。
  「あれっ、ヒキガエルさん。・・・ああっ!」
   ヒキガエルは、大きなおもちのかたまりを、大きな口でアングリ、アングリ、たべていました。
  「おや、サルさんですか」
   ヒキガエルはサルのほうをむいて、またアングリと、とてもおいしそうにたべました。
  「うまいよ、サルさん。ぼくが、ここまでおりてきたら、そこの木のきりかぶに、おもちがひっかかっていたのさ。ぼくがくるのをまっていたんだね。つきたてのおもちは、やわらかくてうまいね」
   また、アングリとたべました。
   サルは、たべたくてたべたくて、しかたがありません。
  「ヒキガエルさん。なかよくしようね。ぼくもすこしたべたいな」
  「だめだめ。やくそくだから、ぼくひとりでたべる」
   また、アングリとたべました。
  「そう。だけどね、ヒキガエルさん」
   サルは、おもちの下のほうをゆびさしました。
  「そっちより、こっちのほうがうまいんだよ。こっちのほうから、たべればいいのに」
  「どっちからでもいいじゃないか」
   ヒキガエルは、もう一ど、アングリとたべました。
  「ぼくのおもちだもの。ぼくのすきなほうからたべるのさ。きみは、そこでみておいで」
  「そっちより、こっちがうまいのになあ」
   ヒキガエルが口をうごかすたびに、サルも口をモグモグさせました。
   でも、ヒキガエルはしらん顔。
   アングリ、アングリと、ひとりでおもちをたべました。
   サルも、さいしょから半分こしていれば、よかったのにね。
おしまい