|
|
4年生の日本民話(にほんみんわ)
風呂(ふろ)のぬか団子(だんご)
広島県の民話(みんわ)
むかしむかし、田舎(いなか)のお百姓(ひゃくしょう)さんが、初(はじ)めて江戸(えど→東京都)へ出てきました。
「ごめんなさい。今晩(こんばん)、泊(と)めてください」
お百姓(ひゃくしょう)さんが、宿屋の前でそう言うと、
「はい、ただいま。さあ、どうぞどうぞ」
宿屋の 女中(じょちゅう)さんは、お百姓(ひゃくしょう)さんを部屋に案内(あんない)しながら言いました。
「ご飯(はん)を先にしますか? それともお風呂(ふろ)にしますか?」
「へえ、お風呂(ふろ)に入れてもらいましょう」
「では、こちらへ」
お百姓(ひゃくしょう)さんは、女中さんに案内(あんない)されて、お風呂場(ふろば)へいきました。
お風呂場(ふろば)には、ぬかと塩(しお)がおいてありました。
むかしは石けんも歯ブラシもなかったので、ぬかで顔を洗(あら)い、塩(しお)で歯をみがいたのです。
でも、このお百姓(ひゃくしょう)さんは、そんなことを知りません。
「はあ、これはきっと、ぬかダンゴを作って食べろというんだな」
そう思い、ぬかに塩(しお)を入れて水でねり、ダンゴをつくって食べました。
「こりゃうまい。こいつは、なかなか上等なぬかじゃ」
お百姓(ひゃくしょう)さんは、ぬかダンゴをすっかり食べてしまいました。
さて、お風呂(ふろ)からあがって部屋にもどると、女中さんが、ご飯(はん)をもってきました。
それを見て、お百姓(ひゃくしょう)さんが言いました。
「おら、お風呂(ふろ)でぬかダンゴを食ったから、もう、お腹(なか)がいっぱいじゃ」
「え? ぬかダンゴ?」
「ああ、とてもうまかったよ」
女中さんは、ビックリしました。
でも、お百姓(ひゃくしょう)さんに、恥(はじ)をかかせてはいけないと思って、そのままご飯(はん)をさげました。
「もしかしたら、明日の朝も顔を洗(あら)うとき、ぬかを食べてしまうかもしれない」
親切な女中さんは、ぬかと塩(しお)のかわりに、おもちをおいてあげました。
さて次の朝、お百姓(ひゃくしょう)さんがお風呂場(ふろば)にいってみると、どうでしょう。
ほかのお客さんは、ぬかを手ぬぐいにつつんで、顔を洗(あら)っているのです。
「なんと、ぬかは顔を洗(あら)うもんだったか。こりゃ、とんでもない恥(はじ)をかいてしまった」
お百姓(ひゃくしょう)さんが顔を洗(あら)おうとすると、目の前におもちがおいてあります。
「よし、今度はまちがわないぞ」
お百姓(ひゃくしょう)さんはおもちを手ぬぐいにつつんで、顔を洗(あら)いました。
すると、おもちがとけて、顔にベタベタとつきました。
それでもお百姓(ひゃくしょう)さんは、うれしそうに言いました。
「やれやれ、今日は恥(はじ)をかかずにすんだわい」
ところが、顔はもちだらけです。
それを見た女中さんは、とうとう腹(はら)をかかえて大笑(おおわら)いしました。
おしまい
|
|
|