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        2年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
クジラの皮(かわ)の絵(え) 
高知県(こうちけん)の民話(みんわ) 
      
       
      
        
          | ♪音声配信(html5) | 
         
        
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          | 朗読者 : エクゼムプラーロ | 
         
       
       むかしむかし、あるところに、とてもゆかいなお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。 
   ある日の事(こと)、町へ行(い)って宿屋(やどや)にとまると、頭(あたま)の毛(け)を長(なが)くのばした男の人と、同(おな)じ部屋(へや)になりました。 
  (はて、この人はどんな仕事(しごと)をしている人だろう? お百姓(ひゃくしょう)には見えないし、物売(ものう)りにも見えないし) 
   お百姓(ひゃくしょう)さんが、男の人をジロジロ見ていたら、男の人がこわい顔(かお)で、 
  「何(なに)か! ご用(よう)か!」 
  と、言(い)いました。 
   そこで、お百姓(ひゃくしょう)さんは、 
  「これは失礼(しつれい)しました。失礼(しつれい)ついでに、おたずねしますが、お前(まえ)さんはふつうの人に見えません、一体(いったい)どんな仕事(しごと)をしている人ですか?」 
  と、たずねました。 
   すると男の人は、おおいばりで、  
  「わしは、絵(え)かきじゃ」 
  と、ふんぞり返(かえ)りました。 
   その態度(たいど)に、お百姓(ひゃくしょう)さんはムッとして、 
  「なんだ絵(え)かきか。それならわしと、同(おな)じ仕事(しごと)だ。大したことはない」 
  と、言(い)ったのです。 
  「なんと、お前(まえ)も絵(え)かきか。よし、それなら一つ、絵(え)の腕比(うでくら)べをしようじゃないか。わしが先にかいてみせよう」 
   絵(え)かきはふでと紙(かみ)を出して、さらさらっとかきあげました。 
   それは、男の人が川からあがってくる絵(え)です。 
  (ほう、なかなかうまいもんだ) 
   お百姓(ひゃくしょう)さんは、感心(かんしん)しながらも、わざとつまらなそうな顔(かお)で言(い)いました。 
  「お前(まえ)さんは、本物(ほんもの)の絵(え)かきですか?」 
  「あたりまえじゃ! この絵(え)はさっき川でおよいでいた人を見ていたので、それをかいたものじゃ」 
  「そうですか。でも、お前(まえ)さんは、まだ見かたがたりませんね。とても一人前(いちにんまえ)の絵(え)かきとは思(おも)えません」 
  「なんだと!」 
  「この絵(え)を、よく見てごらんなさい。足の毛(け)が、みんな立っています。人が川からあがった時(とき)、毛(け)はぬれてピッタリとはりつくはずですよ」 
  「ぬぬっ、・・・そんな細(こま)かいところまで、いちいちかけるか!」 
  「だからまだ、一人前(いちにんまえ)の絵(え)かきじゃないと言(い)ったのですよ」 
   お百姓(ひゃくしょう)さんが、いばって言(い)いました。 
   絵(え)かきは、くやしくてたまりません。 
  「ようし、そんならお前(まえ)がかいてみろ」 
  「わかりました。わたしは、こんなつまらない絵(え)はかきません。絵(え)をかくには、物(もの)の特徴(とくちょう)を、しっかりとつかむことが大切(たいせつ)なのです」 
  「ぬぬぬっ。・・・いいから、はやくかけ!」 
  「では」 
   お百姓(ひゃくしょう)さんは、ふでにたっぷりすみをつけると、ペタペタペタと、紙(かみ)をまっ黒(くろ)にぬりはじめました。 
   絵(え)かきが、ビックリして、 
  「こりゃ、何(なん)の絵(え)だ?」 
  と、言(い)ったら、お百姓(ひゃくしょう)さんは、すました顔(かお)で言(い)いました。 
  「クジラの皮(かわ)です」 
  「クジラの皮(かわ)だと。ただ、まっ黒(くろ)にぬりつぶしてあるだけじゃないか」 
  「そうです。クジラというのは、人の何十倍(なんじゅうばい)もある、大きな生き物(いきもの)です。こんな小さな紙一枚(かみいちまい)では、とうていかけません。だから皮(かわ)のはしっこのところだけをかきました」 
      おしまい 
        
       
         
         
        
      
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