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        4年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
ハチの恩(おん)がえし 
栃木県(とちぎけん)の民話(みんわ) 
       むかしむかし、那須与一(なすのよいち)という、弓の名手(めいしゅ)がいました。 
   与一(よいち)は源氏(げんじ)の武士(ぶし)で、平家(へいけ)と戦(たたか)った屋島の合戦(やしまのかっせん)のとき、海にのがれていた平家の小舟(こぶね)にたてた扇(おうぎ)の的(まと)を、たった一本の矢で射落(いお)としたのです。 
   あまりの見事さに、このときは敵(てき)も味方も関係(かんけい)なく、大歓声(だいかんせい)がわきあがったそうです。 
   このとき与一(よいち)は、二十歳(20さい)の若者(わかもの)でした。 
   さて、この与一(よいち)は下野の国(しもつけのくに→栃木県(とちぎけん))にいた幼(おさな)いころから、弓の腕(うで)をみがいていました。 
   あるとき与一(よいち)は、弓を持って那煩野(なすの)の原へ、一人で狩(か)りにでかけました。 
   すると、ススキのやぶの中にはられたクモの巣(す)に、一匹(1ぴき)のハチがかかって、もがいていたのです。 
   葉っぱのかげには大きなクモがいて、獲物(えもの)が動かなくなるのをジッと待っています。 
   ハチをかわいそうに思った与一(よいち)は、弓の先でクモの巣(す)をやぶって、ハチを逃(に)がしてやりました。 
   それから何日かたって、与一(よいち)はまた弓を持って、那須野(なすの)の原にでかけていきました。 
   ススキをわけいっていくと、やぶの中に子どもが一人で立っています。  
   子どもはにこやかな顔で、与一(よいち)にふかぶかと頭を下げていいました。 
  「このあいだは、命をお助けくださってありがとうございました。父がお待ちしております。ぜひ、うちへお立ちよりください」 
  「このあいだとは?」 
   なんの事かと思いましたが、与一(よいち)はハチを助けたことを思いだしました。 
   まさかとは思いましたが、与一(よいち)は子どもに案内(あんない)されるまま、ススキのやぶをわけながらついていったのです。 
   すると、これまで何度も足をふみいれたことのあるやぶの奥(おく)に、美しい赤い門がたっていて、金銀をちりばめたようにかがやく宮殿(きゅうでん)があったのです。 
   宮殿(きゅうでん)の中に通されると、頭にかんむりをのせて、きらびやかな衣(ころも)をまとった老人ろうじん)が待っていました。 
  「来てくれてありがとう。この子はわたしの子です。あなたの助けによって命をすくわれました。恩返(おんがえ)しのお礼をさしあげたいとぞんじます。これは、わが家につたわる宝物(たからもの)で、この矢で射(い)れば、あなたは天下(てんか)に名をあげることができるでしょう」 
   そういって、与一(よいち)に一本の矢を手わたしました。 
   与一(よいち)は矢をもらって黄金の宮殿(きゅうでん)をあとにし、ふと門をふりかえってみると、黄金の宮殿(きゅうでん)もりっぱな赤い門も、まぼろしのように消えていていたのです。 
   与一(よいち)がのちに、屋島の合戦(かっせん)で平家の小舟(こぶね)の扇(おうぎ)の的(まと)を射(い)たのは、このときハチにもらった矢だったという事です。 
      おしまい         
         
        
       
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