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        6年生の日本民話 
          
          
         
お菊(きく)ののろい 
群馬県の民話 
       むかしむかし、上州(じょうしゅう→群馬県)に、小幡上総介(おばたかずさのすけ)という侍(さむらい)がいました。 
   とても短気で乱暴(らんぼう)な男でしたが、お菊(きく)という美しい女中(じょちゅう)をとても気に入っていました。 
   ある朝、上総介(かざさのすけ)がお菊(きく)の運んできた朝ご飯を食べようとしたとき、ご飯の中に何やらキラリと光るものが入っていました。 
   はしでつまみ出してみると、何とそれは、一本のぬい針(ばり)だったのです。 
   上総介(かざさのすけ)は怒(いか)りでからだをふるわせると、お菊(きく)につかみかかって問いただしました。 
  「この恩知(おんし)らずめ! よくもわしを殺そうとしたな。どうしてこんなことをしたのじゃ!」 
   まるで身に覚えのないお菊(きく)でしたが、上総介(かざさのすけ)に何度も何度も殴(なぐ)りつけられて、いいわけをするひまもありません。 
   そのようすをおもしろそうに見ていた奥(おく)さんが、言いました。 
  「この女は、性根の曲がった頑固者(がんこもの)です。殴(なぐ)ったぐらいでは白状しますまい。どうです、ヘビ責(ぜ)めになさっては」 
  「よし、そうしよう」 
   お菊(きく)は裸(はだか)にされて、お風呂(ふろ)の中に、たくさんのヘビと一緒(いっしょ)に投げこまれました。 
   お風呂(ふろ)の水がだんだん熱くなると、苦しくなったヘビがお菊(きく)にかみつきます。  
   地獄(じごく)のような苦しみの中で、お菊(きく)は、 
  「このうらみ、死んでもはらしてくれようぞ!」 
  と、言い残して、ついに死んでしまったのです。 
   それから何日かして、奥(おく)さんは体中をハリでさされる痛(いた)みにおそわれて、寝(ね)こんでしまいました。 
   医者をよびましたが、まるで原因がわかりません。 
   何日も何日も苦しんだすえに、  
  「お菊(きく)、許しておくれ、針(はり)を入れたのはこの私(わたし)じゃ。上総介(かざさのすけ)に可愛がられる、お前がにくかったのじゃ」 
  と、言うと、そのまま死んでしまいました。 
   上総介(かざさのすけ)は本当のことを知って、死んだお菊(きく)にあやまりましたが、いまさらお菊(きく)は許してくれません。 
   その夜から、上総介(かざさのすけ)の屋敷(やしき)に、お菊(きく)の幽霊(ゆうれい)が出るようになったのです。 
   家来や女中たちは怖(こわ)がって逃(に)げてしまい、一人きりになった上総介(かざさのすけ)は、何度も何度もお菊(きく)にあやまりながら死んでいったのです。 
   その後、小幡家(おばたけ)の人々によって、お菊(きく)のためにお宮が建てられました。 
   それからは、お菊(きく)の幽霊(ゆうれい)は現われなくなったという事です。 
      おしまい         
         
        
       
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