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        6年生の世界昔話 
          
          
         
ウシ飼いと裁判官(さいばんかん) 
ボスニアの昔話 → ボスニアのせつめい 
      
       むかしむかし、ある貧乏な男がお金持の裁判官(さいばんかん)に、ウシ飼(か)いとしてやとわれました。 
 ウシ飼いは、やせ細ったウシを一頭持っていました。 
 そのウシを、いつも主人のウシと一緒に、牧場に連れて行きました。 
 ある日の事、どうしたことか、主人のウシとウシ飼いのウシが、けんかをはじめました。 
 そして、やせっぽちで弱いはずのウシ飼いのウシが、主人のウシをツノで突き殺してしまいました。 
 ウシ飼いは、主人の裁判官のところへかけつけました。 
「ああ、おなさけ深いだんなさま。たいヘんな事がおこりました。どうか公平(こうへい)に、おさばきくださいませ」 
「よろしい。話してみなさい」 
「実はは、今日、牧場でだんなさまのウシが、わたくしめのウシとけんかをしまして、わたくしめのウシを突き殺してしまいました。神さまは罪をおかしたウシに、どんな罰(ばつ)をおくだしになるのでしょうか?」 
「まて、まて。はじめから、くわしく調べよう。わしのウシは、おまえのウシをにらんだかね」 
「いいえ、だんなさま」 
「わしのウシが飛びかかったとき、おまえのウシは、モーと、ないたかね」 
「はい、だんなさま」 
「では神にちかって、正直に言うのだぞ。おまえのウシが、わしのウシを怒らせたのだろう」 
「そんな事はわかりません。だんなさま。モーと言ったのが、どんなわけかなんて、調べられませんよ」 
「それでは、どっちが悪かったのか、おまえにはわからないのだな」 
「はい、だんなさま」 
「どちらが悪かったのか、わからないとすれば、罰(ばつ)する事もできない。動物をさばく事など、できると思うか?」 
「そのとおりでございます。だんなさま。まったく、公平におさばきくださいました。ただ、あの・・・」 
「なんだ。まだ用があるのか?」 
「あの、いま思い出したのでございます。わたくしが、考えちがいをしておりました。わたくしめのウシが、だんなさまのウシを、殺してしまったのでございます」 
「なんだと。そうか。では、神がおまえのウシに、どんな罰をおくだしになるか、本で調べよう」 
「おや? だんなさま。あなたさまのウシが罰(ばつ)をうけなくてよいのなら、わたくしのウシもうけなくてよろしいでしょう。動物をさばくことなど、できるとお思いですか?」 
「そっ、それは・・・。そのとおりだ」 
 裁判官は、それ以上、もう、何も言えませんでした。 
      おしまい 
      ※ この「牛飼いと裁判官」の朗読は、以下の方々により、ご提供を受けた作品です。 
           
        「牛飼いと裁判官」(ボスニアの昔話) 
   
        出演:山口真依 
        音楽・演出:thin-p@A'sf 
        企画・制作:A'sf 
   
        おはなしパタくんへのリンクURL 
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        A'sf へのリンク 
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