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        4年生の世界昔話 
          
          
         
水の妖精(ようせい) 
セルビアの昔話 → セルビアのせつめい 
       むかしむかし、あるところに、泳ぐのが大好(だいす)きな男の子がいました。 
   ある日、雨がふって川の水がふえたのに、いつものように一人で泳ぎはじめました。 
   すると、ドドーッと流れる水が、男の子を押し流(おしなが)してしまったのです。 
  「助けてえ!」 
   男の子がおぼれかけていると、川の底(そこ)から、ユラユラと浮(う)きあがってきたものがありました。 
   水の国の妖精(ようせい)です。 
   いつもは、おぼれ死んだ人を自分の城(しろ)へつれていくのですが、男の子を見て、助けてやりたくなりました。 
   一人でたいくつだったので、いっしょにくらそうと思ったのです。  
   水の妖精(ようせい)は、波のゆりかごで男の子をねむらせ、そっとだいて帰りました。 
   そして、水晶(すいしょう)のヘやの、水晶(すいしょう)のベッドに寝(ね)かせました。 
   それから水晶(すいしょう)の柱のかげにかくれて、男の子のようすを見ていました。 
   しばらくして、目をさました男の子は、  
  「あれ? ここはどこ?」 
   あたりを、キョロキョロと見回しました。  
   水晶(すいしょう)のテーブルの上には、水晶(すいしょう)のおもちゃがたくさんあります。 
   男の子はしばらくの間、それで遊んでいましたが、けれど急に、  
  「あーん、あーん!」 
  と、泣(な)きだしたのです。 
   水の妖精(ようせい)は、そばへいって聞きました。 
  「ぼうや、どうして泣(な)くの?」 
  「帰りたい! お家へ帰りたい!」 
  「でも、ここのほうがおもしろいわよ。こんなにすてきなおもちゃがあるもの」 
  「でも、家のほうがいい。帰りたいよう!」 
   水の妖精(ようせい)は、こまってしまい、夜、男の子がねむると、銀のへやへつれていきました。 
   つぎの朝、目をさました男の子は、なにもかも銀でできているへやにビックリ。  
   そして、銀のテーブルの上の銀のおもちゃで遊びはじめました。  
   でも、すぐにあきてしまい、シクシク泣(な)きだしました。 
   水の妖精(ようせい)は、聞きました。 
  「ぼうや、どうして泣(な)くの?」 
  「おにいさんやおねえさんと、遊びたいの!」 
   やがて泣(な)き疲(つか)れて寝(ね)てしまった男の子を、水の妖精(ようせい)は、今度は金のへやへ連(つ)れていきました。 
   目をさました男の子は、金色のまぶしいへやにビックリ。  
   金のテーブルの上の金のおもちゃで、しばらく遊びましたが、けれどもまた、すぐに泣(な)きだしました。 
  「ぼうや、どうして泣(な)くの?」 
  「お父さんや、お母さんに会いたいよう!」 
  「こんなにたくさんの、金があっても?」 
  「そうさ、決まってるじゃないか」 
   男の子は、お父さんやお母さんの笑顔(えがお)を思い出しました。 
   そして、みんなでいっしょに遊びにいった日のことを、水の妖精(ようせい)に話しました。 
   水の妖精(ようせい)は、城(しろ)の宝石(ほうせき)を全部、男の子の前につみあげました。 
   キラキラ光る、宝石(ほうせき)の山です。 
  「これをみんなあげるわ。それでもお父さんやお母さんのほうがいいの?」 
  「うん。お父さんやお母さんのほうがいい!」 
   水の妖精(ようせい)は、いっしょに暮(く)らすのをあきらめました。 
   男の子が眠(ねむ)ると、もとの川岸へ連(つ)れていきました。 
   水の妖精(ようせい)は、また一人ぼっちかと思うと、悲しくて涙(なみだ)がポロリとこぼれおちました。 
   男の子は目をさますと、急いで服を着ました。  
  「あれ? 水の妖精(ようせい)といたのに、夢(ゆめ)だったのかな?」 
   でも、ポケットには宝石(ほうせき)がいっぱいはいっていました。 
   男の子は、家へとんで帰りました。  
  「ただいま! ぼくだよ」 
  「まあ、おまえ、どこにいってたの!」 
  「心配したんだぞ!」 
   お父さんもお母さんも、にいさんもねえさんも、かわるがわる、男の子を強く抱(だ)きしめました。 
      おしまい         
         
        
       
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