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        4年生の世界昔話 
          
          
         
スーホーの白いウマ 
モンゴルの昔話 → モンゴルのせつめい 
      
       むかしむかし、モンゴルの草原に、スーホーという、歌のじょうずな若者(わかもの)がすんでいました。 
   スーホーはお母さんと二人で、ヒツジをかってくらしていました。 
   ある日スーホーは、ヒツジに草を食べさせにいったきり、日がくれても帰ってきません。  
   お母さんが心配していると、スーホーは生まれたての白い子ウマをだいて帰ってきました。  
  「まあ、きれいな子ウマだね。どうしたんだい?」 
   お母さんが聞くと、スーホーは、うれしそうにいいました。  
  「帰るとちゅうで見つけたんです。持ち主もやってこないし、母ウマもいないんです。夜になって、オオカミにでも食われたらかわいそうだから、つれて帰ってきました。うちでかってやりましょう」 
   スーホーは、白い子ウマをとてもかわいがって、だいじにだいじに育てました。  
   子ウマはどんどん大きくなり、やがて雪のようにまっ白な、りっぱなウマになりました。  
   スーホーと白いウマは、なかのよい兄弟のように、いつもいっしょでした。  
   ある日のこと、村にすばらしい知らせがつたわりました。  
   王さまが若者(わかもの)たちを集めて、競馬大会(けいばたいかい)をひらくというのです。 
   そのうえ、優勝(ゆうしょう)したものは、王女のおむこさんにむかえられるというのでした。 
   それを聞いた村の人たちは、いいました。  
  「スーホー、いっておいでよ。おまえならきっと、優勝(ゆうしょう)できるよ」 
   そしていよいよ、競馬大会(けいばたいかい)の日がやってきました。 
   国じゅうから、じまんのウマをつれた若者(わかもの)が集まりました。 
   けれど、白いウマにのったスーホーにかなうものは一人おらず、スーホーが優勝(ゆうしょう)しました。 
  「あの若者(わかもの)と、白いウマを、ここへよびなさい」 
  と、王さまはいいました。 
   スーホーは、大よろこびです。  
   ところが王さまは、スーホーが貧乏(びんぼう)なヒツジ飼(か)いだとわかると、王女のおむこさんにするのがいやになってしまいました。 
   王さまは、つめたくいいました。  
  「その白いウマをおいていけ。そのかわりに、黄金三まいをおまえにやることにする」 
   これを聞いたスーホーは、ビックリです。  
  (この白いウマは家族のようなものだ。それをお金で買おうなんて、なんてひどいことを) 
   スーホーは、王さまの命令(めいれい)をことわりました。 
   すると王さまは、顔をまっ赤にしておこり出し、  
  「王のいうことを聞かぬぶれい者め。この者をムチでたたくがよい」 
   家来たちは、スーホーをムチでピシピシうちました。  
   キズだらけになったスーホーは、見物席(けんぶつせき)の外へほうりだされ、王さまは家来に白いウマをひかせて帰っていきました。 
   スーホーは友だちに助けられて、やっと家に帰りました。  
   ムチのために、すっかりボロボロになったスーホーは、何日もねたきりでした。  
   でも、お母さんのひっしのかんびょうで、だんだん元気になりました。  
   ある晩(ばん)のことです。 
   トントンと、門の戸をたたく音がしました。  
  「だれだい?」 
   返事はありません。  
  「なんの音だろう?」 
   外に出たスーホーは、ビックリ。  
   白いウマが、門のそばにたっていたからです。  
  「お、おまえ、帰ってきたのかい」 
   スーホーはかけよって、思わず白いウマをだきしめました。  
   ところが白いウマの体には、何本ものするどい矢がつきささっているではありませんか。  
  「なんて、ひどいことを!」 
   スーホーは夢中(むちゅう)で矢をひきぬき、お母さんといっしょにキズの手当をしてやりました。 
   けれど白いウマは、つぎの日、死んでしまいました。  
   やがてスーホーは、白いウマがもどってきたわけを知ることができました。  
   王さまは、白いウマを手に入れたのがうれしくて、人びとをよんで酒もりをはじめました。  
   ところが、おおぜいの人びとのまえで、白いウマにのろうとしたとたん、白いウマは王さまをふりおとしてしまったのです。  
   おこった王さまは、家来たちにむかってさけびました。  
  「あのあばれウマを、つかまえろ。つかまらなければ、殺(ころ)してしまえ」 
   家来たちは、にげていく白いウマにむかって、雨のように矢をあびせました。  
   それでも、白いウマは走ったのです。  
   体に矢がささりながらも、なつかしいスーホーの家にむかって、死にものぐるいで走ったのです。  
   白いウマは、自分をかわいがり、育ててくれたスーホーのそばで、死にたかったのでした。  
   白いウマが死んでから、スーホーは悲しくて、くやしくて、夜もなかなかねむれない日がつづきました。  
   そしてある日、スーホーは弓矢を取り出すと、その弓矢の手入れを始めました。  
   白いウマのかたきをうつため、この弓矢で、王さまを殺(ころ)そうと思ったのです。 
  (白いウマよ、待っていろよ。あしたの朝、あの王さまを殺(ころ)して、おまえのかたきをうってやるからな) 
   その日の晩(ばん)、スーホーのゆめの中に、白いウマがあらわれていいました。 
  「スーホーさん、わたしのかたきをうつことを決心してくれて、ありがとう。ほんとうにうれしいです。でも、もう、わたしは死んでしまっています。王さまを殺(ころ)しても、わたしが生き返ることはありません。それどころか、あなたも殺(ころ)されてしまうでしょう。どうか、かたきうちはやめてください。それより、ひとつお願(ねが)いがあるのです。どうかわたしの体で琴(こと)をこしらえてください。わたしは琴(こと)になって、いつまでもあなたのそばにいます」 
   つぎの日、スーホーは白いウマの骨(ほね)としっぽをつかって、琴(こと)をつくりました。 
   さおの先は、白いウマの頭のかたちをきざみました。  
   やがてスーホーは、草原でヒツジのばんをしながら、いつもこの琴(こと)をひくようになりました。 
   美しい琴(こと)の音と、むねにしみるそのしらべは、ほかのヒツジ飼(か)いたちにとっても、このうえないなぐさめとなりました。 
   スーホーの琴(こと)が聞こえてくると、みんな一日のつかれをわすれ、じっとしずかにその音色に耳をかたむけるのでした。 
      おしまい         
         
        
       
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