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        6年生の世界昔話 
          
          
         
レモンのごほうび 
インドの昔話 → インドのせつめい 
       むかしむかし、インドのあるお城(しろ)に、ラブダ・ダッタという、しょうじきな門番がすんでいました。 
   門番はびんぼうで、きるものがないので毛皮を腰(こし)にまいたきりで、雨がふろうが日がてりつけようが、門に立っていました。 
  「なんとまじめな門番だろう」 
   王さまは、その門番が気に入り、ある日、狩(か)りにでかけるとき、その門番をおともにつれていきました。  
   象にのった王さまの前に立った門番は、あいかわらずはだしで、腰(こし)に毛皮をまいたかっこうで、  
  「やあ! やあ! たあっ!」 
  と、棒(ぼう)をふりまわして、イノシシや、シカをやっつけてしまうのです。 
  「おかげで、えものがふえたぞ」 
   王さまは、大よろこびでした。  
   あるとき王さまは、となりの国と戦争をはじめました。  
  「王さま、わたくしもおともさせてください」 
   門番は、王さまにお願いしましたが、  
  「だめだ。おまえは弓がつかえないだろう」 
  「はい。でも、弓はつかえなくてもだいじょうぶです」 
   門番はふとい腕(うで)をだして、王さまに見せました。  
  「これさえあれば、てきをやっつけてごらんにいれます」 
   そして戦争にいくと、門番は棒(ぼう)だけでゆうかんにたたかい、だれよりもたくさんのてきをやっつけたではありませんか。  
  「なんと、いさましい男だろう」 
   王さまは、また、感心してしまいました。  
   それから、何年もたちました。  
   門番はあいかわらず、お城(しろ)の門に立っていました。  
   そんな門番を見て、王さまは、  
  「あの門番はまじめだし、いさましい男だ。それなのに、よほど運がわるいとみえて、いつもびんぼうしている。なにか、ほうびをやりたいものじゃ」 
  と、かんがえました。 
   そして、けらいたちを大勢あつめました。  
   門番も、やってきました。  
  「ラブダ・ダッタよ。ここへきて、なにか歌をうたっておくれ」 
   王さまがいうと、門番は大きな口をあけて、こんな歌をうたいました。  
  ♪運の神さま えこひいき。 
  ♪お金持ちには しんせつで、 
  ♪びんぼう人には しらんかお。 
  ♪運の神さま えこひいき。 
   王さまはおもしろそうにわらって、門番にレモンを一つあげました。  
  「ごほうびはレモン一つだった。やっぱりわたしは、運がわるいんだなあ」 
   門番がしょんぼりと門に立っていると、坊(ぼう)さんが声をかけました。  
  「おお、みごとなレモンだ。どうです。この着物と、とりかえてくれませんか?」 
  「いいですとも」 
   門番はよろこんで、着物をもらいました  
   坊(ぼう)さんは王さまのところへいって、レモンをさしだしました。  
  「王さま。りっぱなレモンを手に入れました。めしあがってください」 
   王さまは、レモンを見てビックリ。  
  「ああ、あの男は、まだ運がむいていないなあ」 
   じつはレモンの中には、たくさんの宝石(ほうせき)がつめてあったのです。  
   つぎの日、また王さまはみんなをあつめて、また門番に歌をうたわせました。  
  ♪運の神さまえこひいき。 
  と、門番がうたうと、王さまはうれしそうにわらいました。 
   そしてごほうびに、またレモンを一つ、門番にあげました。  
  「ああ、きょうもレモンだった」 
   門番はガッカリして、レモンを持ったまま門に立っていました。  
   そこに、役人がやってきました。  
  「なんときれいなレモンだろう。王さまにさしあげよう。どうだ、着物(きもの)二枚ととりかえてくれないか?」 
   門番はレモンをあげて、着物(きもの)二枚をうけとると、それを売って食べ物をかいました。  
   役人がもってきたレモンを見て、王さまはかなしくなりました。  
  「どこまで運のわるい男だろう。着物(きもの)二枚ととりかえたなんて」 
   またつぎの日、王さまはみんなをあつめて、門番に歌をうたわせました。  
   そしてまた、ごほうびにレモンをあげました。  
  「王さまは、めぐみぶかい方なのに、へんだなあ? どうしていつも、レモンしかあげないのだろう」 
   けらいたちは、ふしぎに思いました。  
   門番は、こんどはレモンを王さまのおきさきにあげました。  
  「おいしそうなレモンだこと。王さまが、およろこびになるわ」 
   おきさきはそういって、門番に金のかたまりをくれました。  
   門番は金のかたまりを売って、ごちそうをおなかいっぱい食べました。  
  「わたしは、いつもレモンしかもらえないけど、きょうみたいなこともあるんだから、がまんしよう」 
   門番はそういって、またいつものように門に立ちました。  
  「何回やっても、宝石(ほうせき)をつめたレモンがかえってくるなあ」 
   おきさきからレモンをうけとった王さまは、それでもまだあきらめません。  
   そして、つぎの日もまた、みんなをあつめました。  
   大臣も町の人びとも、あつまってきました。  
   門番も、あとからやってきました。  
   王さまはいつものように、門番に歌をうたわせました。  
  ♪うんの神さま えこひいき。 
  ♪いつまでたっても 
  ♪お金持ちには しつせつで、 
  ♪びんぼう人には しらんかお。 
  「うまいうまい。それでは、ほうびをあげよう」 
   王さまはいつもより、もっとたのしそうにいいました。  
  「こんどこそ、お金をどっさりあげるにちがいない」 
   みんなは、ジッと王さまの顔をみつめました。  
   ところが、王さまがくれたのは、やっぱりレモン一つきりです。  
   門番がうけとろうとすると、王さまはわざと、そのレモンを床(ゆか)に落としました。  
   すると、床(ゆか)に落ちたレモンはまっぷたつにわれ、中からひかりかがやく物がこぼれ出ました。  
  「あっ、宝石(ほうせき)だ!」 
  「いっぱいつまっているぞ。これはすごい!」 
  「お金より、ずっといいじゃないか!」 
   みんなは、ビックリしていいました。  
   門番はあっけにとられて、口もきけません。  
  「そうだったのか。やっぱり王さまは、めぐみぶかい方だったんだよ」 
   けらいたちは、口々に王さまをほめました。  
   王さまは門番に、宝石(ほうせき)のつまったレモン一個のほかに、村を一つと、金貨もたくさんりあげたということです。  
      おしまい         
         
        
       
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