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          幽霊船 
         
        
         
         
        幽霊船 
        百物語 
         
        オリジナル版 
      
       むかしむかし、カツオ取りの漁師たちが遠くの海へ出かけましたが、目的の場所へ到着する前に夜になってしまいました。 
 帰ろうにも向かい風が強くて、船が思う様に進みません。 
「ああー、たいくつだな」 
 見張りの若い男がぼんやりと海を眺めていると、向かい風に逆らいながら近づいて来る船がありました。 
「おや、あれはなんだ?」 
 その船は、船べりにも、ほづなにも、青白い炎が数え切れないほどともっています。 
「ゆっ、幽霊船だ!」 
 それは万灯船(まんとうせん)と呼ばれる幽霊船で、この辺りの海にだけ現れるのです。 
 年配の漁師が、見張りの若い男に言いました。 
「いいか。幽霊とは絶対に、口をきいてはいかんぞ」 
「う、うん」  
「それに、『ひしゃくで水をくれ』と言われたら、ひしゃくの底を抜いて渡すんだ。うっかり普通のひしゃくを渡したら、そのひしゃくで船に水を入れられて、船を沈められてしまうからな」 
「わかった。口はきかずに、ひしゃくを渡す時は底を抜くんだな」 
 
 やがて幽霊船は風に逆らいながらも滑る様に近づいて来て、漁船とへさきを並べました。 
 船べりには、ひたいに三角のきれをつけた幽霊たちがいて、 
「水をくれ〜」 
「頼むから、真水を飲ませてくれ〜」 
と、かぼそい声をしぼり出して言います。 
 幽霊は、男だけではありません。 
 女や子どもたちも、まじっています。 
 これを見た船頭が、漁師たちに言いつけました。 
「おい。水のたるを五つ六つ、持って来い」 
「何を言うんだ! そんなのとんでもねえ!」 
 漁師たちは、反対しましたが、 
「いいか。 
 海の上では飲み水がないくらい、つらい事はない。 
 相手が幽霊船だとしても、ここはなさけをかけてやろうではないか」 
と、船頭は言って、幽霊船になわを投げ渡して水のたるを次々とつるし、幽霊たちにたぐらせました。 
 船べりの幽霊たちは、うれしそうに水だるを受け取ると、ゆっくりとその場を離れていきました。 
 
 やがて風もおさまって、朝にはすっかり波のおだやかな海になりました。 
 そして漁を始めたところ、たちまちの大漁です。 
 
 それからというもの、この船頭の船は漁に出るたびに、必ず大漁だったそうです。 
      おしまい 
      この作品は、読者からの投稿作品です。 
           
         
      作者 :つれづれ居士         
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