福娘童話集 > きょうの百物語 福娘童話集 きょうの百物語 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
 


福娘童話集 > きょうの百物語 > 11月の百物語 > 幽霊船

11月4日の百物語

幽霊船

幽霊船

日本語 ・日本語&中国語

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「つれづれ居士」  つれづれ居士

♪音声配信(html5)
朗読 : 佐々木久美子

 むかしむかし、カツオ取りの漁師たちが遠くの海へ出かけましたが、目的の場所へ到着する前に夜になってしまいました。
 帰ろうにも向かい風が強くて、船が思う様に進みません。
「ああー、たいくつだな」
 見張りの若い男がぼんやりと海を眺めていると、向かい風に逆らいながら近づいて来る船がありました。
「おや、あれはなんだ?」
 その船は、船べりにも、ほづなにも、青白い炎が数え切れないほどともっています。
「ゆっ、幽霊船だ!」
 それは万灯船(まんとうせん)と呼ばれる幽霊船で、この辺りの海にだけ現れるのです。
 年配の漁師が、見張りの若い男に言いました。
「いいか。幽霊とは絶対に、口をきいてはいかんぞ」
「う、うん」
「それに、『ひしゃくで水をくれ』と言われたら、ひしゃくの底を抜いて渡すんだ。うっかり普通のひしゃくを渡したら、そのひしゃくで船に水を入れられて、船を沈められてしまうからな」
「わかった。口はきかずに、ひしゃくを渡す時は底を抜くんだな」

 やがて幽霊船は風に逆らいながらも滑る様に近づいて来て、漁船とへさきを並べました。
 船べりには、ひたいに三角のきれをつけた幽霊たちがいて、
「水をくれ〜」
「頼むから、真水を飲ませてくれ〜」
と、かぼそい声をしぼり出して言います。
 幽霊は、男だけではありません。
 女や子どもたちも、まじっています。
 これを見た船頭が、漁師たちに言いつけました。
「おい。水のたるを五つ六つ、持って来い」
「何を言うんだ! そんなのとんでもねえ!」
 漁師たちは、反対しましたが、
「いいか。
 海の上では飲み水がないくらい、つらい事はない。
 相手が幽霊船だとしても、ここはなさけをかけてやろうではないか」
と、船頭は言って、幽霊船になわを投げ渡して水のたるを次々とつるし、幽霊たちにたぐらせました。
 船べりの幽霊たちは、うれしそうに水だるを受け取ると、ゆっくりとその場を離れていきました。

 やがて風もおさまって、朝にはすっかり波のおだやかな海になりました。
 そして漁を始めたところ、たちまちの大漁です。

 それからというもの、この船頭の船は漁に出るたびに、必ず大漁だったそうです。

おしまい

前のページへ戻る

     11月 4日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
ユネスコ憲章記念日
きょうの誕生花
サフラン(saffraan)
きょうの誕生日・出来事
1968年 名倉潤(芸人)
恋の誕生日占い
内気でおとなしく、争い事が嫌い
なぞなぞ小学校
足ではかけるけど、手ではかけない物は?
あこがれの職業紹介
CGクリエイター・CGデザイナー
恋の魔法とおまじない 309
気持ちをスッキリさせるおまじない
  11月 4日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
サケのおじいさん
きょうの世界昔話
虹の鳥
きょうの日本民話
カッパのくれた宝物
きょうのイソップ童話
サルとイルカ
きょうの江戸小話
与太郎
きょうの百物語
幽霊船

福娘のサイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日などを紹介
福娘童話集
日本最大の童話・昔話集
さくら SAKURA
女の子向け職業紹介など
なぞなぞ小学校
小学生向けなぞなぞ